前田勉 「窓枠大の空」
篠笛 〜「連々篠歌会」に寄せて〜
奏者が
篠笛を右横一文字に構えて
唄口の手前の縁に下唇を添えると
観客の息さえ止まったかのように
舞台とその空間が
静まりかえった
目をつむる
ほんのわずかな時間
目をつむり
自らの鼓動を確認しながら
まぶたの裏側で弾けとぶ白い光をとらえ
呼気を整える
それから
上唇をかぶせ気味にして
籠めた息を
唄口の向こう切り口に吹き込むと
合わせて奏でる人たちの
息吹が聞こえてきた
いつもの柔らかい音(ね)だ
奏者たちが合奏し始めると
切り口をかすってゆく澄んだ音(ね)が拡がり
舞台と客席の空間
光と闇を
青白い夕月の色に染めていった
「海市」第6号掲載