驟雨





突然降り出した雨が止むと
庭先のアスファルトから
ブクブクと音がする
昨夜から
冷めることなく蓄えられた熱が
粗目の表面へ
地中の水分をはじき返している
溢れる思惟が
初めからそこにあったように
発信しているかのようだ

   空から
   散り散りに輻射して
   戸惑ったまま
   庭先で固まったもの
   数多く
   水滴の中に収めた思いが
   こぼれて
   落ちて
   砕け
   あらぬ方向へ思い思いに
   散ってゆく

   酔いつぶれてみたかった頃の
   誰かの不安定な心情に似た
   やわらかい若さ
   まるで
   高速撮影の映像が
   少しだけ止まったような
   寸時のきらめきをもっていた

ブクブクと
溢れる思惟が初めからそこにあったように
にわかな雨が
発信している



「密造者」第95号掲載