前田勉 「窓枠大の空」
午後の陽
野の草むらの
緩やかな傾斜に立つオブジェがひとつ
遅い午後の陽に照らされたまま
海の方角へ傾いて
物憂く時間を数えていた
ギラギラと汗ばむ光の飽和状態から
放散され弾け出る時間の泡ぶくが
湾曲したステンレスのアームを
ゆっくりと回転させている
草むらを這い揺らぐ影が
林の隙間から射す陽の筋と
交差するあたりで
消え
時間は止まる
やがて
台座の肌にできた小さな三角の陰影が
時間とともにかすかに動きはじめる
影が消え時間が止まるのはいつか
の時代にわかっていたことで地の
上の僕らは知らなかっただけかも
知らない
「週刊アキタ」2015.10.23掲載