シジフォスの朝





はじめてではなかったが
多くを語りすぎた夜
数え上げた時間に
ほどよくまとめあげられた記憶が
パラパラと音を立てて拡散していった

  めざめてから
  どのくらい経った頃であったか
  無為なこととは知っていたが
  その時間を追うと
  思い巡らす朝の始まりが
  何億光年かの前とか後とか
  気の遠くなるほど途方もない空間を
  成していた
  その重なり重なる一つの区域に
  三方から挟まれていると気付くのは
  たやすかったはずなのに
  酔いすぎていた
  多くを語りすぎていた

  思うことも振り返ることもなく
  いつものようにあきらめ
  ほんの少しだけ自分を許し
  転がり落ちては
  岩を持ち直して登り始めていた
  はずだ
  だれから命じられた訳でもない
  意味ある生として


いつもの通りではなかったが
思うことくすぶって
数え上げた記憶の平面が焦げついていた
ひとまとめの時間を形成する
確証の無い
確認行為

構築する




秋田魁新聞「あきたの賦」掲載