前田勉 「窓枠大の空」
ツナガリ
〜 長兄へ捧ぐ ② 〜
そこ
という
あなたの位置や
ここ
という
私の位置
それぞれがそれぞれに在って
思うことは続いていた
昨日まで無意識であったツナガリを
遠い記憶からかき集めると
湿った空気は震え
戸の隙間からすり抜けてゆく
時間
の
断続的な擦過音が
室内に響く
深さ長さ重さ
それらを感じたのはいつであったか
問うことなく問われることなく
すべて過去形になり
意識された問いは
始まらないまま終わってしまった
繰り返し
繰り返し
繰り返された
新たな蘇生
の朝
あなたはあなたで
わたしはわたしでしかなかったのだ
生きてきたことや
生きていることの
ツナガリ
で
物事は何もかわらないまま
いつものように流れている
「海市」第5号掲載