前田勉 「窓枠大の空」
すき間
たたずんだその先の
大きな空
青く
望んだその先で
広い海
群青に
心の静けさを確かめるかのように
つながって
遠い水平線が波打っていた
プカリと浮く小さな島二つ
何事もなかったように
時を隠しこんできたのかもしれない
通りすがりの者には
見えないだけだと言いたげに
ダンプカーの行き交う道端に
ぽつり と
砂ぼこりをかぶったプレハブの
ガソリンスタンドが在った
満タン
と言っただけで
あとは釣銭を受け取り
頷いて
発進した
お互いの手だけが
わずかに触れた
心もとない時間
その時から二年が過ぎて
コトバも思いも
いまだに見つからないまま
苛立って
暑く発熱していた南三陸
の
午後
に戻る
「密造者」第94号掲載