夢想(2)





そして
巡って来た季節
壁に飾られた額縁の無いキャンバスから
葉書大に切り抜かれて
テーブルに置かれると
その小さな一枚へ
やわらかく穏やかに
日脚が描かれて

うつろう

長い眠りであった
時間の前と後ろがつながらないことに
苛立ち
もがいていた
流れる風の
異次元からまとわりつく
鮮やかな刺々しさよ
午後の野原の
草いきれにむせる戸惑いよ
長らく忘れていた
既視感にも似た痛みよ
ここにあるべき位置づけに慌てる
群小なる哀れさよ

   ここにいるよ
   ここにも

   私はここにいる
   ふんわりと浮かんで
   かぐわしい春の野の
   ゆるやかな斜面に
   横たわっている



「密造者」第96号掲載