前田勉 「窓枠大の空」
夢想
高熱にうなされながら
昼と夜
寸断されてゆく時間を見ていた
まるで
破断しささくれだった劣化テープのようで
私の
前と今と後ろが結びつかない不合理に
苛立った
それまで
意識することもなく時間が重ねられ
どこかしこで
誰かとつながってきたように
ここに在ることすべてに
その位置付けを
不器用にも
配置させようとして戸惑っている
そうしなければならない必然性はないが
そうでなくともいい
とも
言い切れず思いきれず
時間が迫ってくる重さや色合いに
同化されそうになってあらがっている
のか
夢は断章的に延々と続いて
終わることを知らず
私の所在が不明なまま
身体が浮いてゆくのを感じていた
ここにいるよ
俺はここにいる
ふんわり
と
逃れて
ここ
に
いるよ
時間は刻まれていた
前と今と後ろがつながらないまま
届かない本質への苛立ちとさがらない体熱
みんな
内面を隠しこんで
カウントダウンのタイマーが刻まれていた
幼少時の麻疹熱の時のようにも似て
布団と汗と熱に
なぜか心地よささえ感じていた
数日のうちの
何時間かが欠けていた
そのことが見えたのは
仰臥した私が
天井の板目の年輪を数え上げていることに
何気なく気付いたときであった
たったそれだけのこと
正転反転を繰り返し
ようやく目覚めた
とき
で
あった
ここにいるよ
俺はここにいる
「海市」第2号 2015.12.20掲載