いつかがそうであったように
窓の枠にはめられた空は
幾日も曇天であった
それでも
時には
雨を打ち放ち
雪を舞わせ
わずかな碧さをみせることもあった

ひとかたまりの雲が
ゆっくりと左へ流れてゆく
窓枠から消え去るまでの間
ベッドに臥すあなたの目線に合わせ
その雲を追ってみると
点滴チューブが邪魔をして
空も
雲も
パイプ椅子に座っていた私も
枠の中で
不自然に分割され
ゆがみ
ぎこちなくそこに在った

その空の下側に
少しだけ見える欅の梢が
西からの微風にゆったりと揺れる
いつの間にか
葉の彩りはうつろい
季節は変わる

昨日からの
続き
意識することのなかった一日
ただ続くこと
ここに在ることの愛おしさが
壁に貼りついた空の中で
ふわり
白い雲になって浮いている



                                                                「詩と思想」2018年6月号掲載