いちにち





立ちつくす夕暮れ
小さな街は
その陰影に寄り添って
センチメンタルな時刻に染まりながら
音もなく
ゆっくりと
変貌してゆく

傾いた陽射しが
隣家の庇から消えてゆくと同時に
その庇に陰が塗られてゆく
人の生きた時間のように
人の生きていることへの畏敬のように
今日を刻んできた思いが
ゆるやかに重なって

路地の周りで
今日も
あたり前のようにある街
さりげなく続いてきた
あなたの風景
病室から見えるだろうか
ほら
大好きな夕陽が
見慣れた工場の広い壁に
茜色に映し出されてきた

時間は
語ることで始まり
聞くことで展開し
生を確認する尊い一日が
ふくよかに
あなたの中に棲息し
私の中にも
また一つ構築される



                                                                    「密造者」第100号掲載