ウミネコ





三・一一の前年
女川の岸壁で
目の縁が赤いウミネコを見た

   目の縁が赤いことを初めて知ったそ
   の時から 鳴き声も歩く姿も閉じる
   眼もみんなボラードに付着し乾いた
   排泄物の白さに重なって過反応 
   嘔吐 それでいいのか キズカナイ
   ママデイレバヨカッタノカ


翌年
女川を訪れると
あの時まで蓄積されてきた日々の位置づけが
窪んだままの岸壁に刻印され
生を今を叫んできた人々の苦しみも
言葉を失うまでの哀しみも続いていた
人々の心がむき出しにされたような残骸の上に
ウミネコが止まっている
赤い縁の目で見ている
何もできない私を見ている



週刊アキタ「詩の広場」掲載