盆の踊り





心を沈め
踊りが終わったことを確認している
ふっ と
時間が切り替わる合い間で
うつつに戻れるかのように

  祖母が着付け
  母も着たであろう端縫いの着物
  赤いしごき
  鳥追い笠に似た編み笠を被り
  限られた視野から
  別世界を追うように
  輪踊りが続く
  揺れるかがり火と
  地面を擦る乾いた草履の音
  笛と三味線が
  哀しげに
  響き続ける

  遠くから流れ続けてきた血が
  優雅に指の先を動かすのか
  心躍らすのか
  左足に右足を交差させ
  左回りに身を廻すと
  長く垂れたしごきの端が
  腰の周りを後追いし
  時間は流れ

  そうして
  今があることと
  当たり前であることが
  継承される

何事も無かったように
足早に帰ってゆく人々の
長く伸びる影
小路に響く嬌声と摺り鉦の余韻
みんな
ゆらりゆれて
私の影に重なる




秋田魁新聞「あきたの賦」掲載

「秋田県現代詩年鑑2011」掲載

2011年秋田県現代詩人賞受賞