さんぽのすすめ] 

砂糖紙 最新刊:2003/04/12


風光降り言
フ ーコ ー フ リ コ と

毎月、その季節ごとに感じる色や匂いや言葉に触れるコラムです。
一時の暇つぶしにどうぞ。

色事典:色名簿

 

睦月・如月・弥生・卯月皐月・水無月・文月・葉月・長月・神無月・霜月・師走

 

- 卯 月 -

 
 

 

四月といえば 桜、入学式、春雨ですね。(そう?)

花と言えば桜。日本人の心。

この季節、桜並木はお花見の人でいっぱいですね。
夏には毛虫を降らせる桜も、ここぞとばかりに花を降らせます。

桜色は色名簿で紹介していますが、花と言えば昔は「梅」というのは有名な話。
和歌ではやはり桜を指すものが多くあります。
花を読んだ詩句は多くありますが、百人一首からちょっと引いてみます。

 花さそふ 嵐の庭の 雪ならで   
   ふりゆくものは わが身なりけり

           入道前太政大臣(新勅撰集・雑一)

意味を知ってる方もいるとは思いますが、
この音の響きはみているだけで情景が浮かぶようです。
春の嵐と言いますが、今年も満開直撃でしたね。

昨晩、駅のホームで電車を待つ間、はらはら目の前をちらつくものがあって
何かと思えば桜でした。
ホームわきに咲く桜の花びらが街灯に照らされていて
ついカメラを向けてしまいました。暗くて写りませんでしたが;
夜桜は白さがまた引き立っていいものです。

春の雨は花の散るのもありますが、どこか情感があるのか色んな言葉が用いられたようです。
花の上に降る「迎梅雨」「華雨」「紅雨」「花時の雨」
「花冷え」というのはお天気でも聞く言葉。
「万物生」とは春に降る恵みの雨と言うことだろうか。
「山蒸(やまうむし)」「愉英雨(ゆえいう)」などかわいい響きの言葉もあったり。
今はちょうど、はるのながあめ=「春霖」かな?

もうひとつ同じように散る桜を歌った歌。

 ひさかたの 光のどけき 春の日に  
      しづ心なく 花のちるらむ

                紀友則(古今集・春下)

この歌も情景の美しい歌だなあと思って好きです。
「光のどけき」というくだりがとても春らしい。
冬とは違うほんのり暖かい風とやわらかい光。
そこに沈丁花や梅が香ると春だなあと思います。

そうそう、この間花見をした時に、桜の香がしたのです。
めずらしいなと思ったのですが、目だけでなく鼻も楽しませるのが花ですね。

それでは最後にもうひとつ。

 いにしえの 奈良の都の 八重桜
     けふ九重に にほいぬるかな

                伊勢大輔(詞歌集・春)

「にほふ」は単独で使う時、「香る」という意味ではなく「美しく照り映える」という意味らしい。
花の咲くのを「にほふ」というこの言葉、とても好きです。

春の長雨の休日に、少しくらいは暇つぶしになったでしょうか?
詞歌ビギナーのため、なにか解釈のおかしい所など在ったら是非教えてください。
日本語ブームといいますし、これもひとつのトリビア?(笑)
興味があれば、本を開いてみてください。

 
 
 
 

参考図書:『評解 新小倉百人一首』三木幸信、中川浩文・著 (株)京都書房
     『田辺聖子の小倉百人一首』田辺聖子・著 (株)角川書店
     『雨の名前』高橋順子、佐藤秀明・著 (株)小学館

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フーコーフリコと私。

風光:景色、ながめ。
風向:風の吹いてくる方向
フーコー:フランスの物理学者
降る:空から落ちてくる。たくさん集まる。
振り:すがた。挙動。それらしく装うこと。
言:ことば。口に出して言うこと。
振り子:重力の作用で、左右同じ距離にゆれ動くようにした装置。
フーコー振り子:国立科学博物館(本館正面階段脇)で今もずうっと回ってる。


*砂糖紙*
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