*砂糖紙*   最新号:1999/7/12


     色辞典

その色について、毎回砂糖の主観的な色と客観的な文献によって構成されています。

なお、色と名称については、TOMBOW社の色鉛筆シリーズ「色辞典」を参考にしました。

*色名簿*
[桜:cameo pink]

5RP  8/6

 

*        季節は深緑、7月        *

あたりまえの話、桜はもう散っている。

でも予告通り今回のテーマは桜。

私の中の”桜”の印象は小学校の校庭。

そして中学校の門へつづく並木。

お花見の習慣は家にはないが、桜の散り際は本当に

昔の歌人の詠んだとおりだと思う。

あの迫力、そして、緊張感。

風の騒々しさに相反する、花弁の落ちるときの静寂。

*      淡い色の花弁。桜の色。      *

 

日本の春といえば、満開のサクラ(桜)である。

桜色は紅染の最も淡い色だから、紅好きの昔の日本人には

軽視されそうなものであるが、実はピンク系のなかでは

昔からいちばん愛好された色であったらしい。

それはその名の通り桜色が、古くから日本が広く愛好し

日本の国花でもある「サクラ」の色であるからだろう。

桜色は薄紅色の淡い色で、平安時代にできた呼称だという。

紅染系統の色は淡くなると青みを増す傾向があり、

やや紫みがかった薄い紅色をさす。

このサクラとはヤマザクラの花の色が色名となったようである。

 

「サクラ」は、古名は「このはな(木の花)」と呼ばれ

草木を代表するものであった。万葉の時代から現代まで歌に詠まれ、

平安時代には観桜の会が開かれている。(これが後にお花見となる)

その名の由来は古くから“木花之開耶姫”の“サクヤ”の転であるとされていた。

サクラの語源に関しては、別の解釈もあり、大槻文彦博士は

『サクラはうららかに咲くから<咲麗>(さきうら)の約である』としている。

それともうひとつ、私の読んだ植物名の由来を書いた本の著者は

『サクラという名は”咲く”という言葉に”ラ”という字がついた呼び名であり、

”ラ”とはムラ(羣)の略で、数あることを示す接尾語である。

”ムラ”とは群がることを示している。』と書いている。

詳しくは自分で調べていただいて、「ピンク色」について少し触れておきたい。

 

「ピンク」という色名は花の色に由来し、

「石竹」や「なでしこ」を意味している。文献によると

この名が日本に流行し定着したのが大正7年だという。

花の持つやさしさや、かわいらしさを漂わせる色で

英語では明るい、あるいは薄い赤をさす基本色名のひとつ。

よく、単純に「桜色」や「桃色」と訳されたりする。

この間の「薄紅」も英語名はorchid pinkとしましたが

これはピンク系のランの花のような色のことをさす。

「薄紅」と比べると、ずいぶん違った印象を受ける。

 

*         ここまで桜の話をしてきたが        *

なんといっても、もう夏である。

次の更新はずいぶん先になるだろうが

今度は海のもので珊瑚色あたりにしようかと思う。

* 一度でいいからきれいな海で、珊瑚をこの目でみたいものだ。 *

 

参考文献:

『日本の伝統色−色の小事典』(日本色彩研究所編/福田邦夫著)読売新聞社

『草木染 日本色名辞典』(山崎青樹著)株・美術出版社

『色々な色 』(近江源太郎監修/ネイチャープロ編集室)光琳社出版

『原色染織大辞典』(板倉寿郎監修/他)株・淡交社

『色のイメージ辞典』(岡部慶三監修/同朋社編集・制作)同朋社

『色の手帳』(尚学図書編集)株・小学館

『日本色彩辞典』(武井邦彦)

第一回目:薄紅

 


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