さ〜そ

女郎/上朗/上臈

 (続々追加予定です)


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女郎/上郎/上臈





下関稲荷町の遊女 金草鞋  十返舎一九
下関稲荷町の遊女 金草鞋  十返舎一九
文政(


赤間神宮—特殊神事 先帝祭(赤間神宮さんのサイト)
ご存知の方も多いかと思いますが、今も続く山口県下関市の安徳天皇を偲ぶ先帝祭で、遊女の扮装をした女性を中心に行われるパレードは上臈道中と呼ばれています。
下関稲荷町は、源平合戦で敗れた平家に付き従っていた女官さん達が安徳帝そして殆どが縁戚であった平家一門の菩提を喪らうために、遊女として土着したとの伝説があり、、赤間神宮を再興した先代の赤間神宮である水野さんが、今の祭礼に育て上げたんですよね。

水野宮司さんと当時の下関水産振興協会会長の藤本万次郎氏(下関中央魚市場社長・山口県公安委員長)、商工会議所会頭林佳介氏(サンデン交通会長・元貴族院議員)、山口県経団連代表中部利三郎氏(大洋漁業(現マルハ)副社長・山口県社会福祉協議会長)は下関のみならず山口県そして当時の日本経済界の重鎮だったのだけれど、水野さんの人柄を高く評価すると共に、「粋人」としても仲が良かった。その人達が、歴史に配慮しつつも、華やかで話題になるイベントになるように智慧を出し合って考え出したのが「上臈道中」だったりします。

それまでは、稲荷町(松田優作さんの実家としても有名)の遊女さんが「上臈道中」としてお礼参りに行くのと、源平武者行列に十二単の衣装を着た官女がお参りに行くっていう二分していたお祭りに、何か中心的なイベントはなかろうかいっていうので、考え出されたのが、この「上臈道中」なんですね。

下関と対岸の門司・小倉では、遊女さんの上の位の人を「上臈」と呼ぶ習慣もあったので、思い切って吉原の行事だった花魁道中の形に、官女をくっつけちゃうっていう大胆な発想で、現在の「上臈道中」の原型を作ったんですよね。

その際に集めた資料は膨大なのですが、そこには現在も未公開の遊女史関連の古文書が数多くあります。

かいつまんでお話しすると、遊女を上臈と呼ぶのは、正に平家滅亡時より始まっているようで、西日本を中心に広がりました。鎌倉後期に一時廃れていたようなのですが、建武の親政-南北朝時代に没落公家や敗戦した武将の娘等が遊女として持て囃される様になり、そのような経歴を持つ人たちを「上臈」と呼ぶようになったようです。それは応仁の乱から戦国時代を経て、安土桃山時代まで継続します。大内氏崩壊の際にも、京から下っていた公家さん達が娘を預けたようですし、下関はこの本場なんですよね。

全国的な「上臈」は戦乱期の生んだ悲劇から生まれた呼称ではあるのですが、江戸期の遊女さんの文化の基となる和歌や遊芸の教養を身に付けた層だったんです。

戦乱の中で世相は殺伐とし、日本史の中でも最も識字率さえ低下していた戦国時代から、安定した江戸時代への移行期、一般の武士や庶民に茶の湯や和歌の素養を広め、遊郭に独自の文化が花開いたのは、正にこの人達の存在であったような気がします。

江戸期に入り社会が安定すると、「上臈」の呼称は再び公家社会の物となり、遊女さんたちは同音の「上郎」と書かれる様になっていきます。1600年代までは吉原うや島原・大阪新地ほはじめとする遊郭の遊女は「上郎」、それ以外は「女郎」と書かれていることが多いのですが、それ以降は表記に統一性や規則性は薄れて行きますが、下関だけは、江戸期を通して「上臈」と呼ばれています。

『知性教養ともに 第一級にして 勇者にのみ その心身をあたうる。そしてその姿は われわれ西欧の王侯の姫君ににたり』

これはシーボルトの言葉(シーボルト日記*八坂書房版より引用)ですが、当時の遊女の姿が髣髴とされます。

また、下関の遊女は、近松門左衛門の作品に数多く登場するのでも有名です。時代が下がって、明治維新に活躍する若い長州藩藩士達が遊び(元勲・井上馨の夫人は稲荷、裏町の出身)遊郭としての格を保ち続けた姿が窺えます。

まだ遺族の方達全員に了解が頂けていないので、経緯の公表は差し控えますが、様々な資料を読み込んだ上で、先帝祭の花魁の扮装に「上臈道中」の名を冠した皆さんは、粋な方々だったんだなぁって改めて感心したりするんですよね。
ビジュアルで贈る、新吉原!  なんて、大したもんじゃないのですが<=おい!、
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