あなたと過ごすクリスマス
待ち合わせの場所は、米花駅の前。
様々な人が雑多に溢れていて、少し落ち着かない。
だけれども、社会人である彼を待つにはぴったりの場所かもしれなかった。
ただでさえ忙しいこの時期、仕事の合間をぬって自分と会おうというのだか
ら。
道はおそらく混んでいるのだろうから、きっと電車で移動をするつもりなん
だろう。ロマンチックなシチュエーションよりも、合理性が先に頭に浮かぶ
っていうのはいかにもだ。
それにしても、と哀は思う。結構、待ち合わせをしている人が多い。
それに、誰か大事な存在を待っている人の顔というのは、みんなどこか似て
いる。
幸せそうに微笑んだかと思うと、不安そうにきょろきょろしたりする。
せわしなくタバコをくわえてみては、慌てて消したり。ガラス窓に映る自分
の姿を、何度も確かめたり。
・・・私も、あんな風に誰かの目には映っているのかしら。
ふと、そんな考えが湧いてきて、なんだか気恥ずかしくなる。
だけど。
きっと、彼のほうがもっと恥ずかしいに違いない。
一見10歳近く違う女の子を連れて、歩いている男は確かに目立つだろうか
ら。
くすくすくす・・・と。溢れてくる笑みを必死で押さえる。
どうしてこんなに、気持ちが高揚しているのだろう。
彼に会うから?一緒に、この特別な日を過ごせるから?
・・・多分、両方ね。
そんなことを考えていた哀の耳に、彼女を呼ぶ声が聞こえた。