あなたと過ごすクリスマス
待ち合わせの場所は、米花デパートの前。
毎年この時期になると、デパートのショーウィンドウには、サンタクロース
とトナカイ達のストーリーがディスプレイされている。子供達にも、人気が
ある。
それを楽しみに眺めている人も多く、待ち合わせとしてはポピュラーな場所
だ。
ましてや今日は、クリスマスイブ。
ショーウィンドウの前には、少しおしゃれをした若い男女が、人待ち顔で立
っていた。
それにしても、と哀は思う。
誰か大事な存在を待っている人の顔というのは、みんなどこか似ている。
幸せそうに微笑んだかと思うと、不安そうにきょろきょろしたりする。
せわしなくタバコをくわえてみては、慌てて消したり。ガラス窓に映る自分
の姿を、何度も確かめたり。
・・・私も、あんな風に誰かの目には映っているのかしら。
ふと、そんな考えが湧いてきて、なんだか気恥ずかしくなる。
そわそわしている。それは確かに、間違いない。
今日は、特別な日だから?
それとも・・・特別な人と、一緒に過ごすから?
・・・多分、両方ね。
今まで、ずっとそばにいたけれど。
改めて、こんな日を一緒に過ごすのは初めてだから。
そんなことを考えていた哀の耳に、彼女を呼ぶ声が聞こえた。