あなたと過ごすクリスマス   コナン edition

 

 

 

 

「・・・で?どこ行く?」

「・・・何よ、いきなり」

だってよ〜と、江戸川コナンは苦笑する。

「今日なんか、どこもいっぱいだろうなあって思ったんだよ」

「・・・でしょうね。ここだって、こんなに人が多いんだから」

哀は、デパートのディスプレイを眺めている人たちを見ながら、そう答える。

「みんな、暇だよなあ」

「・・・あら。そういうあなたは、何なのかしら?」

「・・・俺はいいの」

そう返しながら、コナンもデパートの壁面を見上げる。

大きなサンタクロースのイラスト。電飾でピカピカ光る。

「・・・なあ」

「何?」

「ここの屋上って、何があるんだっけ?」

「・・・さあ?」

コナンはニヤリと笑うと、哀を見た。

「行ってみねえ?」

 

「うわ〜・・・さびれてやがら」

コナンはぐるっとあたりを見回し、思わずそうつぶやく。

どこのデパートの屋上にもありがちな、ペットショップと観葉植物&熱帯魚

の店。

それから、いくつかの乗り物があるだけの、小さな遊園地。

米花デパートも、例外ではなかったようだ。

哀は、人気まばらな辺りを見回し、ちょっと首をひねった。

「ねえ・・・ここ・・・来た事ない?」

「あ〜ん?まさか」

コナンは、何言ってんだよとばかりに笑う。

「何でお前が、こんなとこへ来るんだ?」

「・・・」

哀は答えずに、どんどん奥へと歩いて行く。コナンは肩をすくめて、それに

付き合う。

やがて2人は、屋上の隅にあった小さなステージの前に出た。

「・・・あ」

「・・・思い出したわね」

コナンと哀は、同時につぶやく。

2人の脳裏に浮かぶのは、同じ光景。

『仮面ヤイバー!!そこです!』

『負けんなよ〜!!』

『仮面ヤイバー、頑張って〜!!』

『・・・何でこんなのに、夢中になれるんだか・・・』

『あら。私は結構、面白いけど?』

あの夏、皆で見に来た仮面ヤイバーショー。今では遠く、懐かしい思い出。

「・・・まだ、やってんのかな・・・ああいうやつ」

「やってるでしょうね・・・子供達のヒーローは、いつの時代も一緒よ」

そう言いながら哀は、屋上の端の金網に近づき、街の明かりを見下ろす。

コナンもまた、彼女の横へ立つ。

しばらくそのままでいると、不意に哀がポツリとつぶやいた。

「・・・私・・・この街が好きだわ」

いきなりの言葉に、コナンはじっと彼女を見つめる。

「・・・暖かいわね、この街の光って・・・」

そりゃ、当たり前だろ?とコナンは軽く笑う。

「たくさんの灯が暖かいのは、あのどれか一つに、君が居るから・・・って、

なんかの歌詞にもあったよな」

「・・・相変わらずキザね、あなたも」

「・・・デパートの屋上で、言うセリフでもないけどな」

2人は、顔を見合わせて笑い出した。

笑いが収まると、コナンはそっと哀の手をとった。

「お前が居るから・・・だから、俺もこの街が好きだよ」

「・・・江戸川君」

「どこへもいくなよ・・・もう、二度と」

哀はしっかりとコナンの目を見つめ、ゆっくりとうなずいた。

雪が、街の明かりを淡く滲ませ始めていた。

 

「メリークリスマス・・・哀」

「メリークリスマス・・・コナン」

 

END

 

あとがき / コナンTOP / クリスマスSP TOP