<ご感想あり
がとうございま す!>
編集者 松
永緑 嬢からのメール (2005年9月13日 火曜日 午前9時35分)
久保元宏さま
おはようございます。『きれいな絵なんかなかっ
た』のご感想をありが とうございます。
うれしかったです!
この本の原書("No Pretty Pictures -A
Child of War")は、
親しい翻訳家の小島希里さんから、どうしても出
したい本だから検討し てほしい、
といって渡されたものです。
作者は絵本作家として有名なアニタ・ローベル
で、とても美しい絵を描 く人です。
(夫のアーノルド・ローベルも、がまくん、かえ
るくんのお話で知られ る
『ふたりはいつも』などを描いた絵本作家)
アニタがユダヤ人で、のちにアメリカ人になった
ことは知っていたので すが、
原書を読み進めるうちに、想像を絶する子供時代
をすごしたことがわ かってきて、
ショックを受けました。
それと同時に、彼女の記憶力が再現した描写がぞ
くぞくするほど刺激的 で、
誤解を招くかもしれませんが、なんて面白い本なんだろう! と思って
しまいました。
においや色、空気、恐怖、喜びを、まるで自分が子供として感じている
ような気がしました。
久保君が指摘したポキポキした短い文章の理由 は、
幼時の記憶を甦らせながら綴ったことと、作家ではなく画家の文章で あり、
母国語ではない言語による文章だから、ということもあるかもしれません。
同じく英語が母国語ではない私にとって、
オリジナルの文章はとても読みやすく、イメージ
を掻き立てるものでし た。
でも、だからこそ、原書の雰囲気の再現と読みや
すい翻訳とのあいだ で、
訳者はずいぶん苦労しました。
「慎重に正確さを確認しながら大きな物語を前に
進めている力技」だと
感じていただけたことを、訳者に伝えますね。
この本の最後の言葉は、とりわけ強く胸に迫って きます。
最 期に、なにを言ったらいいのだろう?
わたしは、遠い遠い血まみれの大陸で、ひどい時代に生まれた。
でも、わたしがそこで暮らしていたのは、ほんのしばらくのあいだだけのこと だった。
今わたしは、ここ、アメリカで暮らしている。
この国に対する愛情は、年とともにどんどん大きくなってくる。
これまでのわたしの人生は、幸せだった。これからも、きっと。
わたしの話は、多くの人々の語ってきた話へのほんのつけ足しにすぎない。 |
これほど悲惨
な子供時代をすご した人なのに、
これまでの人生を強く肯定して幸せを求める姿
に、涙がこぼれそうにな りました。
おそらく、とてもつもなく強靭な精神力の持ち主 なのだと思います。
絵本作家としての彼女の仕事は、装飾的といえる
ほど美しいものです。
美しい絵が、風景が、記憶がまったくなかった時
代をすごしたからこ そ、
なのかもしれません。
(日本語版のタイトルを決めるとき、picturesをどう訳すか、とても悩みました)
『みなみちゃん・こみなみちゃん』を気にってく ださった
お子さんにも(ありがとう!!)、いつか読んで いただきたいです。
共
犯新聞でのご紹介もうれしいですが、
「写真、下半分カットすればいいのに〜。
いつもビール飲んでるみたい〜」と、
苦笑い。
ありがとうございました!
松永緑
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