1.悦子の章
[母からのメッセージ]
[はじまり・学校決まる。]
1.悦子の章
...母からのメッセージ...
我家族は、今までも海外で暮らしてきたが、
日本人学校に通っていたので、英語での教育は、ここが初めてだった。普通、日本人は、
日本人学校がない場合は、インターナショナルスクールへ行くが、ここには、
そのインターナショナルスクールもなく、普通の公立校に通うことになった。
中学校で英語を4ヶ月習っただけの次女は、悲惨だった。それでもまあみんな
なんとかやってきて、色々あったけど、ここでの生活を楽しんでいる。
この夏休み、長女が、我家のホームページを作ると言い出し、燃えた。
彼女の勢いに押され、私と次女が協力することになった。
三人で書いたので、まとまりがないし、まだ不完全だが、追々、
良い物にしてゆくとして、ON WEB してみることにした。
意見や、「こういうことが知りたい。」とかあったら、メールください。
ともかく、
娘達が学校に通えるようにしなければならない。
新しい学年が始まったばかりだったから、気持ちはあせったが、
セントルシアと日本の時差は、13時間。昼と夜が正反対だから、
体を慣らすだけでも簡単ではない。早々に、大型ハリケーンが近づいてくるし、
夫は会議でワシントンへ行ってしまうし…
一週間ぐらいたって、電話連絡があって、
Nさんに教育省へ連れて行ってもらう。薄いオレンジ色の封筒が二つ。
その場で開けてみると、入学許可証で、
それぞれ、コンベントと書いてあった。希望のコンベントで、しかも
２人とも同じ学校で、本当に嬉しかった。これで一安心だと思った。
家族で大喜びした。
次は、この書類をもって学校へ…。学校は、とても急なくねくねの
上り坂の先にあった。小柄の中年のシスターが、エプロンをかけて、
学校の中を掃いていた。この人がシスタークレア、この学校の校長だ。
書類を見せると、 Ｎさんによると、教育省の上の人が、縁故でコンベントに何人かいれたため、
今年のコンベントの入学生が、大幅に定員オーバーしてしまい、問題になって、
更迭されたという。
数日後、また教育省から呼び出し…。行くと、
またオレンジ色の封筒をくれた。開けてみると、次女、翔の入学許可証で、
学校が変わっていた。
教育省に掛け合いに行くことになった。
相手は、体の大きな黒人だった。「１年生で
一人空きができたと思ったが、あれは間違いだった。」
私はみんなからコンベントが絶対良いと聞かされていた。
子供達にも、もう言ってしまった。別々の学校だと送り迎えもとても大変だ。
な、な、なんとか、一緒の学校に…。
しかもコンベントに…。正式の通知をくれたじゃないか。
一体あれはどうなるんだ！必死にくいさがる。 家族中で大喜びしたのに…。翔にどうやって伝えたら良いのだろう。
私は、本当に泣きたい気持ちだった。でも、もう私にできることはなかった。
翔は、以外に、平静だった。 こうして、二人の学校生活が始まった。Written by Etsuko
夫の仕事の関係でセントルシアに来たのは、1998年9月の半ばだった。早いもので、2年になる。
あの時、長女は、中3、次女は、中1、三女は、4歳だった。
まずは、所定の用紙に書きこんで、日本からの書類を添えて
教育省に提出しなくてはならない。希望校を書く欄もある。
回りの人々に聞いて回る。だれもが、行くなら「コンベント」と言う。
家がどこになるかも分からないから、通学のことなどを考えると、
本当にどうしたらいいか分からなくなった。ともかく、二人とも希望校は、
コンベントと書いて、提出した。
「今週は卒業式でとても忙しいから、来週来なさい。」
「英語ができない。それでどうやってやってゆくつもり…。」
「三年生のほうはいいけど、１年生のほうはもう満杯。
物理的にこれ以上は無理。」
「とにかく、今は何も言わずに、帰りなさい。」
とても不機嫌で、厳しい口調で、取り付く島もない。
不安がふくらむ、帰るしかない。
「定員一杯なのでC.C.S.Sにした。」
「定員一杯なんだからどうにもならない。」と言う。
シスタークレアから
よっぽど強力なクレームが入ったのだろう。相手は頑として譲らない。
黒い肌が、赤みを帯びてくるのがわかる。
大きな体の彼は、声を荒げて言った。
「C.C.S.S.のどこが不満なんだ。」
「この決定が不満なら、コモンエントランスを受けてもらおう。」
これで勝負はついた。私の完敗だ。
コモンエントランスと言うのは、セントルシアの子供達が
小学校の最終学年で受ける一斉テストのこと。セントルシアの
セカンダリースクールは、ランクがはっきりしていてる。
このテスト成績と本人の希望で学校が決まる。
うちの子供達がこの試験を受けた場合、まして、翔の場合、
一番下の学校にも入れてもらえないかもしれない。
彼女は元々サッパリした服装が好きだった。
紺とか黒が多く、男の子のような格好をしていた。スカートとか
ワンピースはほとんど着た事は、なかった。
新しい学校の制服は、なんと、真っ赤なフレアースカートと
胸に赤い星マークの入った白いブラウスだった。
彼女は、新しい学校への不安より、新しい制服が、
着心地悪そうだった。
