【鯰の道も一歩から(2/3)】


 昼食後、ここでS川へ行ってBONを狙うか、U川でもう少しノーマル鯰を拾って行くか検討し、 夕方までU川水路で粘ることにした。もっとも、明るい内にS川の地形を把握しておきたかったので、 5時前後には移動するという段取りに落ち着いた。

 時計を見ると、午後1時40分。通常に鯰を狙うには少し時間が早すぎるような気がしたが、ヘラ師が 帰って、ポイントが空いているので、小移動しながら目に付くポイントへスピナベをキャストしていた。

「ギラッ、ゴン!」

 やはり足元で出た!今度は45cmオーバーなのか?結構パワフルな突進を繰り返す。ここしばらく味わっていない ファイトを楽しんでいたら…バレてしまった。

 そこからは鯰の本領(?)が発揮され、ミスバイトの嵐となった。 飽きない程度にアタックがあるのだが、ことごとく乗らない!午前の部終了時点で5割あったキャッチ率が 4割…3割へと見る見る降下していく。

 「ギラリッ!…ズシ…フッ」と、マッディな水の中で鯰がもんどりうって アタックしてくる瞬間が見えるのだが、一瞬重みを感じるだけで、フックアップしない。次第に焦ってくるが、 どうやらこれが本来の鯰釣りの姿のようだ。磯部さんにも来てはいるが、やはり乗っていない。

 午後4時頃、この日10回目のアタックにようやくフックアップに成功!大きいのがかかったのか、なかなか 上げられない。足元まで寄せては沖へ突進されるを繰り返し、苦戦していた。 というのも、バスなら浅瀬に「座礁」させると、 横たわって抵抗できなくなるのだが、鯰の場合、体が横に広いので、水位がほとんどない場所にズリ上げても 「ヌルヌルヌル」と水中と変わらない速度で器用に這って再び入水してしまう。 この変則アタックにてこずっていた。

 今度のは50cmであった。このくらいまでくると、抵抗も少し激しくなるようだ。カメラを準備していたら、 自分でスピナベを外し、あっという間に水中へダイブして行った。楽と言えば楽なのだが、せめて写真を撮らせて 欲しかった…。

 その後、磯部さんに2匹目が釣れたところでU川水路を後にし、本命のS川へ移動した。

 S川は山の間を雄大に流れており、徳島県の勝浦川、那賀川上流域を思い出すような綺麗な景色であった。 ただ、こんな綺麗な川に1mを越す大鯰が生息しているというのだから、なんともミステリアスである。

 最寄の公園の駐車場に車を停め、ウェーダーを履いて準備する。駐車場の先には森があり、河原はその向こうか…と 思っていたら、森の下が湿って見える。良く見ると、水没しており、木々の間にゴミが流れついているのであった。 人工的に水位を調整しているとのことであるが、ここまでの増水を見ると「津久井湖」を思い出す。 (津久井湖も増水時は木の上をボートで漕げるのだ!)

 やたらと湿った芝生を歩き、森の手前まで来る。木々の並びが切れた場所から川の本流が覗けた。太く力強い 流れが眼前に広がった。ここにBONが生息しているのだ。

 「前来た時、ここで追って来たんですよ」と磯部さん。 「タクさん、シンキングバイブレーション投げてみ、釣れるかもよ」 と、ドキッとするようなことを磯部さんに言われた。

 それでは…とお言葉に甘え、勝負ルアーである「T.Dバイブレーション」を結び、 川の中心へ向かってフルキャストした。記念すべきS川第1投だ。琵琶湖オオナマズというモンスターの存在を 「釣りキチ三平」で初めて知ってから十数年、まさかそいつを実際に狙って釣りに 来られるとは夢にも思わなかった。そんな事実だけで興奮してきた。

 「実際、BONの生息域にルアーをキャストしたのだから、ヒットする確立は0%では無くなったのだ」 とか考えていたら、

「ガツ…」

 と、ルアーが動かなくなった。ドッキーン!としたが、数m先にある木の根っこに 根がかりしただけであった。1投目から勝負ルアーをロストしてしまった。更に、移動中にウェーダーのソールが半分剥がれてしまい、 車に戻らざるを得なくなってしまった。なんとも締まりの無い初挑戦である。