＊ベリーベリーコロシアム＊
〜漆黒の青年〜
| 「 」 「キルシュ。うん。」 「 」 「学校には行けるよ。」 「 」 「シードルやガナッシュにも言っておいて。 「あと、カシスにも。無駄に心配かけんのもヤだそうだしね。」 「それと…当分、ここに来ない方が良い。」 受話器を置き、深く溜息をつく。 何秒かたった後（のち）、顔を上げてラズが居る部屋へと足を運ぶ。 （…ごめんね…ラズ姉…。） 心の中で、そう呟きながら。 「………何で今日に限って…雨、なの…？」 孤児院の窓の横の壁に寄りかかりずるずると床に座り込み、 左腕で右腕をギュッと掴み、そのまま俯く。肩口からサラリ、と髪が落ちる。 （このまま…何もかも忘れられたら…？） そう、考えて、自照気味に笑う。 そんな事は絶対にないから。 あり得る筈無いから。 でも…こう、願ってしまうのは、 人間だから。 自分が人間として、産まれてしまったから…。 コンコン 突然のノックに、意識を戻される。 黄昏ていた自分を小さく笑ってから、誰か？と扉の向こうの人物に問う。 「ボク。ボクだよ、ラズ姉。」 「…ストロ？ちょ、ちょっと待って！」 慌てて髪を纏め、帽子をかぶり、ピアスとペンダントを付ける。 人と会う時には、いつもこうしている。笑みを浮かべる。 「良いわよ、開けても。」 カチャリ…。 「久しぶりだね、ラズ。」 「…ぁ……………。」 浮かべていた笑みが、凍り付くのが解る。 相手が…一番、今日、会いたくなかった人物だから…。 「で…。あれは誰？」 「知らないによ…。会ったことも話た事も無いに…。」 「じゃあ…なんで…。」 「なんで、ラズが…。」 「あんなに怯えてんのよ。」 今まで黙っていた黒髪の青年…ガーナが口を開く。 「人と向かいあってる時くらい… 帽子。とりなよ？」 「………。」 無言で…まるで口がきけなくなったかの様に、俯きながら首を振るラズ。 「じゃあ、昨日は、 どうしてとっていたのかな？」 「？！」 弾かれたように顔をあげるラズ。 白銀の瞳は、深紅に染まっている。 「どうして…って顔しているね？」 「…………。」 カタッと音をたて、椅子を立つガーナ。 机の向こうのラズの右頬に、手を当てる。 明らかに怯えた目をして、ガーナの漆黒の瞳を見る。 ガーナはその行動に、柔らかく微笑み、言った。 「忘れないでよ。」 と。 「…ラズ姉…ごめん…。」 ギシ… 「あ、クラン姉。 どうし…」 「あいつ、あんたのせいじゃないわ。」 ストロは、クランの突然の言葉に、ポカン、としていたが、 クランに抱きついた。 「ごめんっ」 「ごめんっ」 「ごめんっっ」 ただ…謝りながら、泣いた。 「え？ストロが？なんで？」 「いや、な？ それがさ、秘密で見に行ったんだ。 そしたら…さ。」 ガナッシュは片目を閉じ、聞いている。 カシスは一見関係なさそうな顔をしているが、きちんと聞いているようだ。 シードルは、ノートを持ったまま、聞いている。 「ラズが…怯えてた。」 その言葉に、ガナッシュが口を開く。 「そいつは多分、ガーナだ。」 「あいつは唯一姉さんを止められた奴だ。」 「なりが妙にストロと似ていて。」 「ストロを見た時思い出したんだ。」 「あいつは——— 「ねぇ。」 「ストロは？」 「クランが寝たってさ。 黒髪の人も出ていったわよ」 「…ふぅん」 「ねぇ、カカオ。あの…黒髪の人、誰？」 ブラックに問いに、カカオはすんなりと答えた。 「ストロの義理兄よ。」 「カカオ！！！」 カカオが答えた後、走ってきたのは、ラズだった。 ラズはどこかせっぱ詰まった様子だった。 「あんた…学校行った？！」 「…まぁ…うん。」 「ガナッシュとミント、居た！？」 「ガナッシュはカシスとかとかたまっていたけど… ミントは、図書室で…。」 「どうしよう…っ」 「どうかしたの？」 「何も…ないと良いけど…」 「ま、まさか…。」 ラズはこくり、と頷き、言った。 「その…まさか。学校へ…行ったわ…！」 「学校に行ったァ！？」 「クランが…後を追ったけど…っ なにかあったら…！」 「と、取り合えず、先に学校へ行きましょう！」 「ちょっと！！ガーナ！」 「待ちなさいよ！」 クランの声に、足を止めるガーナ 「どこに行く気よ。」 「——————。」 何百も 何千も 何万も 人を殺したのに それを、 忘れようなんて… 甘いんじゃない？ それに…永遠に、キミは 「ガーナは」 罪。 「噂では」 と言う名の 「７この国を」 鎖に捕らわれ 「たった一人で」 生きていくしかないんだ。 「潰したそうだ。」 忘れないで。 |
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登録日 ： 2002年08月24日 15時32分38秒
更新日 ：
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