『都市育成シュミレーションとしてのSIMCITY』研究レポート
レポート26〜日本の用途地区〜


 我が国の地域制は、用途地域を地域制の基本とおいているのはアメリカと同じである。ここでは日本の用途規制について少しだけ紹介しよう。

【用途地域制】
 土地利用の現況とその推移動向を分析し、それと基本方針(マスタープラン)に盛られた長期の土地利用計画を対応させて以下のように分類される。色は住居系:緑〜黄、商業系:赤、工業系:青となっている。
用途地域の種類 特徴
第一種低層住居専用地域 低層住宅の良好な環境を守るための地域。小規模なお店や事務所を兼ねた住宅、小中学校などが建てられる。
第二種低層住居専用地域 主に低層住宅の良好な環境を守るための地域。小・中学校などの他、150m2までの一定のお店などが建てらる。
第一種中高層住居専用地域 中高層住宅の良好な環境を守るための地域。病院、大学、500m2までの一定のお店などが建てられる。
第二種中高層住居専用地域 主に中高層住宅の良好な環境を守るための地域。病院、大学などの他、1500m2までの一定のお店や事務所などが建てられる。
第一種住居地域 住居の環境を守るための地域。3000m2までのテンポ、事務所、ホテルなどは建てられる。
第二種住居地域 主に住居の環境を守るための地域。店舗、事務所、ホテル、パチンコ屋、カラオケボックスなどは建てられる。
準住居地域 道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これを調和した住居の環境を保護するための地域。
近隣商業地域 近隣の住民が日用品の買い物をする店舗等の業務の利便の増進を図る地域。住居や店舗の他に小規模な工場も建てられる。
商業地域 銀行、映画館、飲食店、百貨店、事務所などの商業等の業務の利便の増進を図る地域。住宅や小規模の工場も建てられる。
準工業地域 主に軽工業の工場等の環境悪化の恐れのない工業の業務の利便を図る地域。危険性、環境悪化が大きい工場のほかは、ほとんど建てられる。
工業地域 主として工業の業務の利便の増進を図る地域で、どんな工場でも建てられる。住宅やお店は建てられるが、学校、ホテルなどは建てらない。
工業専用地域 もっぱら工業の業務の利便の増進を図る地域。どんな工場でも建てられるが、住宅、お店、学校、病院、ホテルなどは建てられない。
 とまぁ1992年の都市計画法改正の時からこうなっているわけですが、改正前と比べてどうなったかというと住居系が3種類から7種類に増えたことになっています。これは人々の快適な生活を守るためにより細かく分けられた、というわけです。また、やたらこれの説明にカラオケボックスが使われるのが目立ちます(住居専用地域ではカラオケボックスを建てることは出来ません)。
 この種類分けがその土地に何が建つか、を決めるものとなります。住宅しか作っていけないところや、商店の上に住宅を作ってもいいところなど、決まっているのはその為です。これはどうやって確認するか?これは自分の町の自治体の役所にいって、「都市計画図」をもらってくればわかると思います、何が建てられるかっていうのもね(こんないい加減でいいのかな)。そうすれば「何でここは工場ばっかりなんだろう?」という疑問が解決されます。そうです、用途規制とはそんなものなのです。あまりにも無責任すぎるぞ、とブーイング受けそうなので都市計画図をWebに載っけてる所を紹介しましょう→こちら。ホントは私の住む名古屋のでも載っけようかと思いましたが、まだ手に入れてないので・・・。

【特別用途地区】
 全国一律の用途地域の指定では、その都市や地区の特性や個性(古い町並みとか、文芸地区とか)が維持できないところや積極的に地区特性を創出していく地区に指定される。これは自治体側が条例によって定める物なので、地元の意見を反映させて町並みを作ることが可能となる。大学のまわりにいかがわしい(笑)建物を建てないように、と規制することも出来る。文教地区、厚生地区、観光地区、娯楽・レクリエーション地区、特別工業地区、中高層階住居専用地区、事務所地区、商業専用、小売店舗地区、特別業務地区などの指定が出来る。特別用途地区は用途地域に付加して行うものなので、以下にあげる物と共に用途規制だけではコントロールできないものを補う形となっている。

【容積地域制】
 用途地域の種別ごとに容積率が決められる。高度地区、高度利用地域、特定街区がある。新宿副都心などは特定街区指定されており、容積率の高い建物が集まることが出来た。
【構造地域制】
 建築物の構造を決める。防火地域、準防火地域などがある。
【景観地域制】
 土地や景観の保全に美観地区、風致地区、伝統的建造物群保存地区、歴史的風土特別保存地区などがある。
【その他の地域地区制】
 駐車場整備地区、流通業務、生産緑地地区、航空機騒音障害防止地区などがある。


 SIMCITYをやっていてもわかると思うが、容積率(建物の大きさ)は都市の交通量や住民の数をも決める可能性のあるものである。大きなビルが建てば建つほどそこに人々が移動(働くため、生活するため)する。そして渋滞が起きる。そんなことが起きないようにするのもまた用途の仕事である。
 大きな工場が建てば汚染がひどくなる可能性が高くなるが、経済発展のためには必要不可欠だ、というときにも的確な用途を当てる必要がある(これはマスタープランの範疇かも知れない)。そう何でもかんでも高密度にすればよい、というわけでないのだ。高密度にすればゴミ・汚染は出るし、水や電気を大量に必要とする、渋滞も起きれば犯罪も増える(特にアメリカ)。高密度というのは生産性という立場から見れば非常に効率的だが、全てを兼ね備えた素晴らしいものではないのだ。
 そう、結局はどちらをとるかなのです。だから市民のニーズにあった都市を造っていかなければならないのです。うまい具合に必要とされる密度や地区を配分することがそれに当たります。再開発なども時代の変化に合わせて都市を作り替えることともいえますね。
 ぎゅうぎゅう詰めの都市では息苦しくて暮らしにくいではないですか。行政ががんじがらめにする用途規制も息苦しいかもしれませんけどね・・・そこがゾーニング紛争の難しいところです(アメリカの話)。

 なんか今回はおまけチックになってしまった。SIMCITY入ってないし、ほとんど。
  

参考文献:「中津川市都市計画マスタープラン」
「都市計画概論」
「都市計画法を読みこなすコツ」

高密度の建物でひしめき合う街。見る分にはいいかもしれないが
住んでいる人が幸せとは限らない。あまりにも計画的すぎると
家畜のように感じるかもしれない。自由がないってね。

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