『都市育成シュミレーションとしてのSIMCITY』研究レポート
レポート25〜用途とその種類〜


 さてさて、何度もゾーニング、ゾーニング繰り返してきたわけだが、日照権とか気にするだけでいいのかっていったらそうではない。むしろもっと深い意味があるのだ。
 ゾーニングをしないと何が起こるか?利権が先立った開発が進むのです。そんなこといっても大したこと無いだろう、と思う方もおられるだろうが、SIMCITYでやってみればわかります
 例えば高密度の工業地区を住宅地区の横に作ってみましょうか?・・・やらずとも結果はおわかりでしょう。(立地場所にもよりますが)重工業地帯が発達します、間違いなく。隣りに住民が住んでいようとお構いなしです。その結果、隣の住宅地区はさびれてしまい、ほとんど人の住まない地区となるでしょう。例え住んだとしても、健康に悪く、悪漢がたむろする危険な地区になるでしょう。
 
 こうならないためにもゾーニングで規制します。もちろん、ゾーニングこそが全てで、正しい手段とは限りませんが、少なくとも放置出来ない問題への対策としては重要な手段となります。
 SIMCITYでは自ら区画をひくのでゾーニングをしていると言えるでしょう。しかし、考えもなく区画を決めては住みよい都市を目指すことは出来ません。冷静に判断して、ここは低密度、あそこは高密度、と区別つけれるようにならないといけません(それはマスタープランの仕事ですが)。

 ゾーニングといっても別に用途指定だけというわけではないですが、ここでは用途と密度を重点に置いて説明しましょう。何度も説明しているかと思いますが、SIMCITY3000では区画の種類が住宅、商業、工業の3種と3つの区画密度があるため、計9種類である(2000では密度が低・高しかないため6種類。クラシックは3種類のみ)。ニューヨークの例を取って説明しよう。

部類 Simでの密度 大体の地区分類
住宅 低密度 R1〜R3
中密度 R3〜R7
高密度 R6〜R10
商業 低密度 C1〜C2(Rに重ねられる)
中密度 C4〜C5、C8
高密度 C5〜C6
工業 低密度 M1
中密度 M1-5〜M2
高密度 M3
 ことわっておくが、これはあくまでもアメリカ(ニューヨーク)の例なので、他の都市もこうとは限りません(まして日本では)。大体の分類はしてあるものの、これはあくまでも目安としてもらいたい。

 【住居系】
 レポート23で紹介しているので詳しいことは言わないが、色々な要素とのかねあいで、実際はR3−2やR4BR5AR9Xなど、R?の後に色々な数や英文字がつくことが多い(例 A、B、Xは階の数で指定)。これは他の地区にも言える。
 一番規制項目が多いのがこの住居系である。もちろん、人間の生活の基本は住居だからだ。住むところがあるからこそ働くことも出来る。出来るだけ住民の生活を守るために(場所や場合によって)細かい分類がなされている。

 【商業系】
 C1、C2は表にも載っているように、住宅地区の上に指定するため、その住宅地区の規制に依存する。C1はその住宅地区対応のもの以外にもC1-6〜9、C2もC2-6〜8のものがある。他にもC4は8種、C5は5種、C6が10種、C8が4種と非常に細かい設定がなされている。ハイフンの前の数が機能の分類を表し、後の数が容積率の違いを示す(それによってビルの高さ、形なども決まってきてしまうのだ)。
 C7がないって?C7は「商業アミューズメント公園」という指定なので、SIMCITYの娯楽施設は区画指定じゃないのでこの中には入らないのです。

 【工業系】
 ほとんどこれに対応します。基本は商業と同じです。M1が6種、M2が4種、M3が2種になっています。M1が軽工業、M2が中工業、M3が重工業というような格好です。というか工業は基本的にこうやって3種類に分けられるのが普通ですね。


 これだけ細かい指定がなされていると混乱しようものだが、さらにこれをうまく配置しなくてはいけないのだが、ここでは何十種類の中から選択しろという説明は(SIMCITYだから)省きます。また、日本のはどうなってんのよ?といわれても困るので、次回、それについてふれましょう。

 アメリカでは容積率の他にオープンスペースという基準が、(-Aとかの詳細の)用途を決めるにおいて大きなウェイトを占めています。容積率というのは簡単に言えば建物の容積を敷地面積の比率で表したもので、建物が高くなればなるほど容積率が高いというもので、高さをとるなら、床面積を減らせといったものである。
 オープンスペースというものはその名の通り空き空間の規制で、建物が高くなればなるほど空き空間を考えて建物を造れ、というものである。またそれと斜線制限(※)という規制が、この背景のビル群のように階を上がれば上がるほど(その階の)面積が狭くなっていったり、小さい庭のようなテラスがあったりするビルを造ることになるのである(日本でも規制はあるが、アメリカの方が厳しい)。
 
 なんでそこまで高いビルをセットバックさせるのか・・・普段何気なく暮らしていると気づかないかも知れないけど、やっぱり日光がある/ないではえらい違いなのです。日光が照らないと次のようなことが起こります。
 ・ビルの陰となった道路は温度が他の温度よりも低くなり、雪が降った後に凍結する可能性も出てくる。
 ・風の流れが全然異なる。すきま風も寒い
 ・植物が育たない。これは緑地の必要性を考えたら大事なことです。建物がセットバックすることによってそのスペースに緑地空間を作ることも可能ですしね。
 ・健康的に悪いし、なによりも日中暗い
 ・洗濯物が乾かない(乾燥機あげればいいじゃんとか言わない!)
 などなどの理由がある。人間が生きていく上で日光を求めるのはごく自然なことなのだ。

 規制のしすぎもいけないが、やはり冷静に分析して、住民の為になることなら進んで規制をするべきである、という例でもあると思う。目的のない規制なんか必要ないですが、規制には目的があってする物がほとんどだということをSIMCITYをやっているみなさんならお気づきではないでしょうか?もちろん、理不尽な規制には断じて反対すべきかも知れませんが、その理由を知ることもまた必要なのでしょう。

 次回は日本の用途について少し触れ、用途利用を考えてみよう。
 
※斜線制限・・・日照・通風・採光など都市生活に一定の空間条件を確保する目的で、隣地や道路の境界からある範囲内で建築を制限する限界線のこと。左図のように細かい数字で規制がなされている。
 住居が中心となる地域では良好な居住環境を維持するために、北側隣地に日影を大きく落とさないように敷地北側の境界からの斜線制限が設けられている(それは太陽が南からさすからである。もちろん、北半球のお話である)。

参考文献:「ゾーニングとマスタープラン」
「都市計画概論」

背景はNYのビル群です


レポート24へ レポート26へ


戻る