『都市育成シュミレーションとしてのSIMCITY』研究レポート
レポート23〜この住宅、何人ですか?〜


 SIMCITYの1マスは1エーカーである、とレポート15で述べたわけだが、では1エーカーにいったいどれだけの人が住んでいるのでしょうか?SIMCITYの画面をぱっと見ると1マスに1件の家が建っているから一家族だろう、と思ってる方も多いと思う。しかし、よく考えてみなさいな、「こんなでかい敷地の家がいくらアメリカでもそうそう作れるのか」という疑問が湧きませんか?「湧きません」と言われたら困るのでもうひとつ、最初のSIMCITYの建物は非常にデフォルメされていたではないでしょうか?そう、その地区の特徴・成長度合いを表した物があの建物のグラフィックだったのです。SIMCITY2000から技術が高度化し、より細かいグラフィックとなりました。しかし道路のグラフィックと同じく、これはデフォルメされていたのです。また、あとで紹介するページにも1マスの最低人口は18人(庭)と紹介されているので、そこの所もおさえておきましょう。
 となると、具体的な疑問点はこうなります
  ・1マスの最低人口は18人
   →こんなに大家族なのか?また、庭に人が住んでいるのか?
  ・1マスは1エーカー=4046.9m2=1224坪!
   →こんな面積をもつ家(敷地)がアメリカでは標準なのか??

 これではまだわかるわけないので、理解しやすいように具体的な検証をしていきましょう

ニューヨーク市の住居系地区におけるゾーニング規制(抜粋)
建物用途 容積率 最小敷地規模 単位面積当たりの 最小空地
率(%)
独立住宅 その他
面積 間口 面積 間口 住戸数 部屋数
R-1-1 0.50 9500 100 4 150
R-1-2 0.50 5700 60 7 150
R-2 0.50 3800 40 11 150
R-3 0.50 3800 40 1700 18 116 150
R-4 0.75 3800 40 1700 18 158 80
R-5 1.00〜1.25 3800 40 1700 18 212〜252 50.0〜62.0
R-6 2.00〜2.40 3800 40 1700 18 411〜454 29.5〜33.0
R-7 2.80〜3.40 3800 40 1700 18 538〜605 18.0〜21.0
R-8 4.80〜6.00 3800 40 1700 18 822〜990 8.0〜10.4
R-9 6.50〜7.50 3800 40 1700 18 1037〜1117 4.2〜6.2
R-10 10.00 3800 40 1700 18 1452〜1742 なし
 これがニューヨークにおけるゾーニング規制の一部(ホントは266ページに及ぶとんでもなく厳しいルール)であるが、ちょっと表の補足説明を。
 ・容積率は前項で説明したとおりなので省略する。
 ・最小敷地規模の面積の単位は平方フィート。間口の単位はフィート。
  独立住宅というのは、1もしくは2家族用の戸建て住宅(R1とR2は1家族)。
  その他というのにアパートやマンションなども含む。
 ・単位面積当たりというのはエーカー当たり、の意味である。許容される最大の数。
  数値に幅のあるものは、容積率に対しての最大許容量の幅である。

 ここで重要なことは青色になっている単位面積当たりの住戸数・部屋数であろう。補足説明にも書いたが、これは1エーカー当たり、つまり1マス当たりの住戸数・部屋数を示すということである。こんないい資料はないでしょう、いただきです。R−1−1を例に取っていえば、1マスに4つの家(もしくはそれ以下)がある、ということが証明できてしまうのです。・・・こういうところからSIMCITYは1マス=1エーカーにしてるんでしょうが。

 とすると、先ほど少し触れた、建物の人口をリスト化してくれた素晴らしいホームページ、「SIMCITY 3000を楽しむページ」「SimCity3000 Maniax」のデータが役に立ちます。これによるとシム人の一番少ない居住数を誇る建物は「フェンス」「芝生」「クイグリーの土地」「ファンシーハウス」の18人(1×1マス)、逆に一番多いのが「レンガアパート」で2400人もの人が住んでいます(4×4マス)。「?なんでフェンスに??」という疑問は置いといて、とりあえず先ほどの表に当てはめてみましょう。
 その前に参考までに
  1×1マス・・・18人〜147人
  2×2マス・・・72人〜604人
  3×3マス・・・628人〜1413人
 R−1−1の最低住戸数は4。18人で割ると平均4.5人。おおっ家族らしくなってきた。7で割っても平均2.6人(新婚夫婦ならあり得る数だ)。また、要求敷地面積から考えても(9500ft2=882.6m2=約1/4.5エーカー)だから1マスに3〜4件が建っていることがわかる。R−2などで考えればもっと納得がいくかもしれません。

 そう考えれば、庭とか、公園などであらわされている土地も考えようによっては人が住んでても問題ない。以上のように最大でもそのグラフィックの建物は1/4エーカー以下のものであるしかないので、その1エーカーの区画の中に公園と家がある、とも考えられる。いや、そう考えよう。グラフィックはその区画の中で代表的な建物を示しているだけなのだ、ということにしておいた方が無難であろう(なんていい加減な)。中密度で区画された1×1マスの公園に72人も住んでいるのも、R−2で変わった形の公園があれば十分に考えられる数だと思われる。そうじゃないと、ホームレスの住処ってことになるけどね・・・案外そうかもね、公園ばっかだし・・・それでも地価は高いのかって?ホームレスの方は地価が高いところに住むんだよ、便利だからね(なぜかマンガ風)。便利だから地価が高いんだけどね。

 次回ではSIMCITYの区画の密度をからませながらこの続きをするとしよう。

※セットバック・・・住宅の壁面を敷地の縁(道路に面する場合もある)からある程度はなしておくこと(歩道とは別だよ。右図)。これは防災面、環境面などを考慮してのことである(日照権なども関わっている)。普通、芝生や花壇、駐車スペースを作るが、救急車両が通れるようにしてあるところもある。アメリカ国民はだいたい5〜7mは離すのが常識だと認識しているらしい。敷地いっぱいの所に塀を建てる狭い日本ではお目にかかれない光景。
※オープンスペース・・・空地。建築物を建ててはいけない所、またはその割合。これも義務である。

参考文献:「都市緑化計画論」
「ゾーニングとマスタープラン」
参考Webページ:「SimCity3000 Maniax」
「SIMCITY3000を楽しむページ 第一シム主義」
ニューヨーク市オフィシャルページ「NYC.GOV」

背景はNYはマンハッタン島のゾーニングマップです


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