『都市育成シュミレーションとしてのSIMCITY』研究レポート
レポート20〜アメリカ=道路?〜


 SIMCITYにも実際の都市にも道路が必要不可欠だが、いったい道路とは何なのでしょう?

 SIMCITYにおける道路の幅はしつこいようだが64mである(とはいってもこれは歩道も含むのだが)。これを聞いた人はまず、「64m幅の道路なんてそうそうありえるか?」と思われる方も多いが、前述したように歩道も含めるので「ありえます」というしかないだろう、今のところは。
 SIMCITYの道路、一見片側1車線+対向車線の2車線の道路に見えてしまうが、こんな幅(64m)の2車線の道路はありえない。しかし、よ〜く考えてみよう、元々SIMCITYのグラフィックはデフォルメだったではないか?確かに2車線ぐらいにしておかないとものすごいグラフィックの書き込みをしなければならない。そうなるとさらに重くなるね、動作が。
 道路一車線の幅は色々あるが、タイルの大きさから一車線3〜4m幅の道路が適していると思われる。サイズからいくと歩道(自転車道・街路樹含む)が10mちょい、中央分離帯が1mぐらい、路側帯が1mぐらい・・・そうすると4、5車線ぐらいか・・・SIMCITYの道路幅に適した道路を考えると、日本では主要幹線道路・幹線道路のサイズがぴったりではなかろうか。


 道路の話はこの辺にしておいて、やはりSIMCITYでは「交通」というものに着目したい。交通とは不特定多数の移動の為に共有される空間内の移動であり、且つ人間の意志に基づく目的を持った移動と定義される。もちろん、SIMCITYにも交通の要素が含まれていてこのあとに説明する都市計画にも大きなウェイトを占めることとなる。普通、交通計画を説明するのは都市計画の説明のあとなんだけど、SIMCITYがどんな感じで道路などについてやっているか知っておくと便利なのでここで調べておこう。

 SIMCITYの作られたアメリカは、道路を中心として発展してきた国であるため我々日本人が思っている以上に道路を開発の中心におく。それは国土的な理由もあるし、車と共に発展してきた国であるという理由から来ているように思われる(その他の理由も・・・)興味深いデータがあるので少し見てみるとしよう。

 このグラフは日本とアメリカのいくつかの都市にて利用されている交通機関の割合(利用者比率)を表したものである。日本では公共交通機関の利用者比率が都心、郊外を問わず高いのに、アメリカではどちらでも非常に低い値となっています。また、日本では二輪車や徒歩の割合が多いことも一つの特徴といえます。

 また、友人を初めて家に呼ぶ場合に自分の家までの地図を書かせると日本人とアメリカ人はまったく違った地図が出来るという話もあります。都市圏に住む日本人の書く案内図は最寄りの鉄道駅を起点として書く場合が多いとのことですが、アメリカ人の書く案内図はハイウェイの出口を起点にして周辺道路名を記入した地図を書くらしいのです。アメリカの道路は全て名前が付けられていて、道路わきに必ず名前が記されているので、道路名と番地だけで目的地にたどり着けるということです(NYのように地下鉄が発展している都市を除く)。

 これは、アメリカではほとんどの人が自動車を利用するので駅にはほとんど注意を払わない、ということの証明である。私はアメリカへ行ったことがあるわけでないが、「都市の中心街以外は(公共交通もタクシーもないので)レンタカーを借りた方がだんぜんいい」とよく聞きます(海外のレンタカーはべらぼうに安い)。この違いからも、いかにアメリカが道路が基準となっているかがわかります。中心となる交通機関の違いによって都市の構造もかなり異なってくる、ということも考慮に入れておきましょう。

 ちょっと上の話の補足説明にもなるが、都市の構造は交通機関によってかなり変わる。日本では都市圏で住む家を探すときには鉄道の便の良いところを探すのが普通である(都市圏ならば)。日本の大都市圏は鉄道を軸として郊外へと市街地が発達してきた(もちろん、近年は自動車もあるが)。そして駅を中心として開発が進み、駅からの徒歩圏が開発されると住宅開発は路線バスに沿った地区に広がることとなった(SIMCITYでは、シム人が二つの交通機関を使うことありません)。だから日本の都市は特に駅周辺に高密度な商業の建物が乱立することになった。
 アメリカでは鉄道が発達していない。それはむしろ発達する理由がなかったからなのだ。アメリカの都市はフリーウェイといわれる料金のいらない高速道路を中心とした道路網を骨格としている(高速道路に料金所がないのもアメリカ製だから、ってことです。日本でも高速無料化という話があったような・・・・・)。。
 道路は鉄道駅のように都市の中心を形成する機能を持っていない。その為アメリカでは郊外に幾つかの中心地が分散して形成されることが多く、そこは低密度市街地となって交通がさらに分散され、鉄道の発展を抑えることになっている。もちろん、日本のように平地が少なくはないので都市に集中する理由もなかったことが鉄道を必要としなかった理由でもある。日本ほど鉄道に依存した国はなかなかない(日本名物通勤ラッシュはそのせいでもあります)。


 というわけで、SIMCITYの鉄道が(高架がなかったりと)ショボく、駅もさみしいのは実はこういう理由があったというわけだ。ちなみにSIMCITYの鉄道は工業を発展させる効力を持っているのだが、それは貨物輸送手段としては日本よりも鉄道を重視してきた結果の証明であろう(アメリカはトラックよりも鉄道)。
 近年アメリカでも自動車がないとどこにも行けないといった問題や、環境に配慮するようになり、自動車依存社会から逸脱しようとする動きも見られる。が、SIMCITYに見られるとおり、日本ほどの鉄道依存社会になることはあり得ない。また、日本でも家庭に自動車がたくさんは入り込んでいたり、道路の便がいい場所に人口が集中するようになったりして、いくつかの路線が廃線に追い込まれている。どちらがいいとは簡単に決められないけど、上手な交通管理が必要となっているのはいうまでもない。

 このようにアメリカと日本では都市の構造がまったく違う、という点を考慮して都市計画・交通計画について考えていくとしよう。

表の参考資料:「都市の交通を考える」天野光三・中川大



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