『都市育成シュミレーションとしてのSIMCITY』研究レポート
レポート14〜ゴミというもの〜


 前回でゴミ処理について語ったが、なぜそこまで必要なのか少し疑問に感じる人もいるだろう「ゴミを減らせばよいのでは?」と。しかしそうは問屋がおろさない。ゴミの年間排出量は増える一方だ。
 日本に住んでいるとつい、ゴミなんて捨てれば誰かが処理してくれると思いがちだが、実はかなり人間の生活に大きな影響を及ぼすものであるのだ。よく、国道の中央分離帯や山奥の空き地にゴミが捨てられていることが多いが、これはまだいい方と言える。震災時や戦後では空き地とあればゴミだめとなることは日常茶飯事である。そう、ゴミの行き先がなければゴミは手頃な空き地に放置されるのだ。当然、ゴミがたまった所の地下は暴落し、ゴミの行き先が決まるまでそのままの状態である(図はSIMCITYでゴミ処理がうまくいってないときに表示される空き地の例である)。また、ゴミがたまれば病原菌などが発生しやすい。そう、市民の健康を害する結果となるのだ(気分的な景観というのにも関わるしね)。
 ゴミが放置されている所は主に空き地、山間部、港、川沿いなど人目のつきにくいところが多い。そう、ゴミを正しく処分するというのはまさにモラル頼りとなる。しかし、いつまでもモラルに頼っていてもゴミを不法に投棄する人はいなくならないので法的な対策を練らないといけないので都市ごとに条例を制定することとなる。

 SIMCITYのゴミに関連した条例は「産業廃棄物税」「タイヤのリサイクル」「紙の節約」「生ゴミを堆肥に」「ゴミの分別」「自然保護団体」などがある。なお「埋立地からのメタンガス転用」条例はゴミに関係ありそうだが、直接ゴミに関わっていない(このことはあとで説明する)。

産業廃棄物税 1950年〜 +§0.00005/人
都市の全ての産業が払う特別課税。負担を分担するため、ゴミの総量に応じた徴収をしないので、中小企業からの不平感は強い。
タイヤのリサイクル 1940年〜 -§0.000025/人
使い古されたタイヤをゴミとして処分せずに道路のアスファルトに混入させることを奨励する条例である。この条例の結果ゴミの量とアスファルト(道路)の敷設のコストが10%下がる。また、この予算は業者が運輸省に渡すためにタイヤを加工することに使われる。
紙の節約 1960年〜 -§0.00002/人
会社から出る紙のゴミの量は現実的にもかなり多く、大きな問題となった。SIMCITYでは前月の10%を超える紙のゴミを出した場合には50ページにも及ぶ報告書を書かないといけないということになっていて、誰もやりたくないから必死になってそれを守るという仕組みになっているらしい(その報告書の方が無駄紙だという意見はおいといて)。近年ではコスト削減もあいまって裏面印刷とか無駄紙の使用量削減などの動きが目立つ。
生ゴミを堆肥に 1970年〜 -§0.00002/人
家庭から出る生ゴミを役に立つ肥料に変換する技術のワークショップ(参加型の講習会)を定期的に開き、市民に生ゴミの堆肥化(コンポスト化)を推奨するものである。現在、家庭にも小型コンポスター(家庭生ゴミ処理機)がずいぶんと入り込んでいて、完全無農薬肥料として家庭菜園などに導入されることとなる。この条例は、こういうことを奨励するものである。
ゴミの分別 1980年〜 -§0.00007/人+リサイクルセンターの数
リサイクルセンターの効率を上げる為に施行する条例。なんと95種類(!)にもゴミの種類を分別し、リサイクルセンター側の手間を省く。リサイクルセンターは前項で述べたようにゴミの排出量を(最高40%)減らす効果があるのでそれにプラス10%排出量を下げる効果をもつ。自治体レベルで決める分別方式のようなもの。最近、日本では家電リサイクル法や容器包装リサイクル法などといった国レベルで定める分別法律とはちょっと違う(それの適用方法は自治体まかせだが)。
自然保護団体 1915年〜 -§0.00033/人
ゴミに限らず大気汚染や水質汚濁などを減らす団体を設立するのを認可する。ゴミは団体員によって拾われ、それを見たゴミ放棄者もゴミを捨てないように心がけるようになる(ハズ)。

 自然保護団体以外はゴミ問題を解決する為に出来た条例なので、比較的新しい時代からしか施行することが出来ない。第二次大戦以降のめざましい産業の発展は世界でもゴミ問題を浮き彫りにしたともとれる。ゴミ問題も、大気汚染も、土壌汚染なども問題になってから対策が出るというのが通例である。冷静に考えれば分かっていたはずなのに、未来を危惧(きぐ)するような少数意見は軽んじられるというのはなにもゴミ問題だけに限らないが、変わらないものである。SIMCITYでは今までの歴史のことが分かっているので1900年代に何をしたらいいかわかりやすいが、実際は手探りだったから・・・と考えるとしょうがないといえばしょうがない。

 「埋立地からのメタンガス転用」条例は、埋立地のゴミの腐敗から発生するメタンガス(ゴミ1kgから最大200リットルものメタンガスが生成)を大気に排出せずにボンベで貯めたり地下パイプで熱や電力の供給施設にまわされる。このガスを利用して発電の手助けをしたり、熱を利用した施設(温水プールや温室)としてゴミのリスクを地域に還元するということを行っている。


 また、日本で捨てれないなら外国へゴミを捨てようという問題もなかなか解決しない問題である。これは近隣都市との取引など比にならない(※)ほどコストが低くて済むことから来ているのだが、本来国内で処理しなければならないゴミを不法投棄する専門の業者もいるという。この悲惨な結果を生んだのは「業者に任せればよい」的なゴミ処理意識が捨てる側にまだ多くを占めているからであろう(原発の核廃棄物も同じである)。もちろん、国内の不法投棄も相変わらずである。
※国内でゴミを処理するにはトンあたり2〜3万円はするが、外国の貿易会社が600円程度で買い取るというので廃棄物処理法違反だろうがやってしまうというゴミビジネスが現実として存在する(日経ECO21 7月号より)


 ゴミは貴重な資源、しかし、ゴミは減らさないと何も変わらない世の中が待ち受けてるだけなので、技術に頼りすぎない為にも「モノ」の扱いを考え直さないといけないのである。「あなたのパソコン、長持ちしますか?ってね(笑)」


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