『都市育成シュミレーションとしてのSIMCITY』研究レポート
レポート13〜ゴミ処理場の仕事〜


 人間が生活していけば必ずゴミは出る。SIMCITYでは3000から「ゴミ」が汚染の新たなステータスとして導入された。まず、ゴミ問題がどうであるかは抜きにしてSIMCITYで取り扱われる「ゴミ」の扱いについて語ろう。
 まず、ゴミを処分する物(機能を持つもの)として、埋め立て地、焼却炉、エネルギー焼却炉、リサイクルセンターがある。埋め立て地以外は立地する施設である。が、用途として考えるとリサイクルセンターは別の機能を持つものとして存在する。他にも近隣都市へ運ぶ(受け入れる)というのもある。それでは、それぞれの特徴を見てみよう。

埋め立て地 建設費§50/タイル ゴミ保管量 265413t 大気汚染:75
文字通りの埋め立て地である。建物じゃなく、住宅地区などのように好きなだけタイルを区画する。ただ単にゴミを埋めるだけなので近所に及ぼすNIMBY汚染は大変なものである。埋め立て地には土壌汚染とメタンガス発生による爆発と大気汚染という問題が伴うため、立地に際する問題は国土の狭い日本では頭の痛い話である。
処分場と違い、穴掘って埋めるため、広大な土地や海岸沿いに埋立地区の大体を作ってその中に埋め立てるということも行っています(とはいっても山間部に埋立を行うのが一番多いのだが)。SIMCITYでも海岸に人工島を造形し道路だけつなげて夢の島のようにする人も多いでしょう。実際ではその跡地利用として、ゴミの上に公共施設(プール、公園、福祉施設etc)を立地することもある。SIMCITYでは25年ほどでゴミが分解されるという話である。
 
焼却炉 建設費§7500 ゴミ処理量 4500kt/月 大気汚染:4000
ゴミを燃やすというのは非常に効果的で、かつ経済的である。その理由として埋め立て地と違い場所をあまり必要としないこととゴミの容量が小さくなりあとが便利であるからである(昔は煤塵をそのまま捨てたりすることも多かったが)。
その結果として、大量の大気汚染などの公害をまき散らす施設として住民から忌み嫌われる存在として扱われてきたのだが、焼却炉から出る排熱を温水プールなどに利用したりと地域還元施設として奮闘している。が、SIMCITYに出てくる焼却炉は登場年(1920年)、デザインからも、ただゴミを燃やすだけの施設のようである。
ちなみにゴミ処理量というのは実に的を射ていて、現実にも100〜500t/日の処理なので登場年からすると妥当な数値であると思われる。
 
エネルギー焼却炉 建設費§25000 ゴミ処理量 5250kt/月 大気汚染:2500
これがにわかに実用化が進んできたスーパーごみ発電ともいうのだろうか。今までの焼却施設にも発電機能はあったがその能力は高々月に換算すると数十MW(SIMCITYのは5000MW/月)で館内の電力を補う程度の物だった。これは元々発電施設として設計されているわけでもないという理由からもあるが、今ほど電気エネルギーの需要が高くなかったと言える。近年、電気エネルギーの需要はとどまるところを知らず、さらに環境負荷を考慮に入れないといけないため既存の発電所に変わるエネルギー施設を考えたところ、年々問題となっているゴミ問題にからませて「そうだ、ゴミ処理施設があるじゃないか」とばかりにまさに『一石二鳥』のエネルギー施設として技術導入が始まったことがきっかけで生まれてきたものであると思われる。
燃料がゴミということもあり、水分を含むゴミで発電をするということは安定した電力供給ができないとされ、ゴミを固形化(RDF)して燃料とするRDF式ゴミ発電というのも出てきている。が、かなりコストを食うなどとされて疑問視されてもいる。RDFとは別にスーパーゴミ発電というものがあるが、これは可燃ゴミの熱量のばらつき補完するために化石燃料を一緒に燃やすという仕組みだ。その他にもガス化溶融というものもあるが、これらに依存するということは大量に出るゴミをエネルギーとして待ち望む様な形になり怖いことになる。
 
リサイクルセンター 建設費§5000   大気汚染:75
これは以上のものと違ってゴミを「処分」してしまうのではなく、またゴミじゃないものに再生するものである。とはいってもSIMCITYでは「モノ」観念がないので具体的にリサイクルということが出来るわけがないので、ゲーム内ではゴミの排出量を減らすという仕組みになっている。リサイクルセンターは最大効率を発揮した場合は人口5万人以下で都市のゴミ発生量を45%削減することが出来るらしい。確かに、削減ということは市場にまた戻るということなのであながちてきとうな数値でもないだろう。
登場年(1970年)からわかるように、この時代から「リサイクル」という言葉がだんだん登場しだしたが、実際に一般レベルまで浸透したのは(日本では)80年代後半である。SIMCITYではビンの回収という数値が出ているが、最初のリサイクルなんていうのは古紙と空き瓶ぐらいなものであった(もうビンの1リットルコーラなんて覚えてないかな)ので適当といえば適当だろう。近年はまたリターナブル瓶の復権運動が進んでいるが、リサイクル率の低いペットボトルが市場を制覇している(リターナブルとは再利用可能のという意味)。形を変えるリサイクルというのは膨大なお金とエネルギーを必要とするのだが、SIMCITYではそんな施設は登場しない(SIMCITYのは資源回収施設みたいな物になっている)。
 
近隣都市との接続 取引レート§5〜/100t    
「やっかいなゴミを近隣都市に引き取ってもらおう。」これは誰でも思い浮かぶことで、「自分の街じゃないから関係ないさ」という念にかられ行動を起こすでしょう。もちろん、ゴミを引き取ってもらうということはお金と引き替えなので、それ相応の資金を持っていないといけません。
そこで起きてくるのが地域格差というやつである。SIMCITYでもこれは再現されていて、大都市はお金を持っている(と思う)し、ゴミの量と土地の残り面積から必然的に大都市が地方にゴミを引き取ってもらうことが多くなるということが発生します(東京のゴミはどこで処分されてるか知ってますか?)。どのユーザーもついやっちゃうこの行動は近隣住民の激しい怒りを買うこと請け合いなしです(ゲームではないですが)。また、現実では環境への影響もゴミ搬出したことによって発生することも珍しくありません。
また、誰だって自分の都市でゴミ処理をしたがならいに決まってるので、お金さえあれば近隣都市へ・・・とまさに究極の解決策としてとられるが、ゴミを搬出/搬入するときには周辺道路の近隣住民からの苦情が来たりと、どういう処分をしてもゴミは嫌われ者であるということを感じさせる。
 

 当たり前のことだが、ゴミ処理場は家庭や経済活動の中から出るゴミを処分する手段である。まったくゴミ処理場を作らなくてよいということはあり得ないし、電力・水道とともに現代生活とは切っても切れない縁である。その為、上に挙げたゴミ処理法をどうにか工夫して都市運営をしていかなければならず、苦闘する市長も多いであろう。
 SIMCITYでは、最初「埋め立て」→発展途上「焼却炉」→安定「ゴミ搬出+エネルギー焼却」というやり方が勧められることが多い(リサイクルセンターは当然使う)。しかし、ゴミはどこへ行ってもゴミなのである。そのことを我々は認識していかないといけない。ゴミをエネルギーに変えるといっても、ゴミとなる無駄が多いというのも現実である。誰かが処分してくれるといいながら延々とゴミだめを作る気ですか?


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