≪正太郎の審査≫


 

正太郎は、はじめてすぐに合気道が好きになりました。でも、はじめのうちは、毎日通うのが少し大変でした。体力的にも慣れていなかったのと、放課後クラスメートと遊ぶ時間がなくなってしまったからです。週に1,2度は「今日は休んでもいい?」と聞いてきましたが、最初の審査に合格して青い帯をもらうと、がぜんやる気が違ってきました。

審査会は、年に3回あります。春と夏、それに冬です。毎日のように稽古に通う小学生達は、当然のように毎回チャレンジします。正太郎も同じです。

1998年7月の審査のとき、正太郎は初めて壁にぶつかりました。子供たちは本番の審査の前に「模擬審査」を受けなければなりません。これは何度も繰り返して受けられるのですが、これにパスしなければ審査が受けられないので、子供たちは一生懸命です。7月の審査で、正太郎はとうとう模擬審査に合格できませんでした。

お稽古事とはいえ、合気道は武道です。武道である以上、初心者であれ、子供であれ、遊び半分の態度は許されるものではありません。姿勢、視線、集中力、そういったことが技の一つ一つ、動きの一つ一つに影響を及ぼしていき、表現に大きな違いとなって現れてきます。正太郎は2年目になって、表には見えない部分、心の持ち方といった部分で壁を越えることが出来ず、なぜ受からなかったのかおそらく本人には分からないまま問題を先送りしてしまいました。

1998年12月、再び審査の季節が来て、正太郎にも試練がやってきました。姿勢もいいし、技も上手に出来る。一生懸命にやっているのに、どうして模擬審査に受からないのだろう?小学4年生には少し難しい課題だったかもしれません。 ある時、車に乗っていて、正太郎に言いました。「前の車のナンバープレートをずっと見ていてごらん」前の車が一時停止したとき、「正太郎、今そこをオートバイが通ったでしょう。あれがちらっと目に入らなかった?」「入った」「その瞬間に集中力が切れてしまっているんだよ」 これで何かをつかんでくれたのでしょうか。明日は審査本番という日、最後になってもう一度模擬審査を受けさせてもらい、正太郎は半年前に越えられなかった壁をやっと越えることが出来たのです。

よかったね。6級合格!

苦労してつかんだこと、忘れないで次につなげてよ。

Friday, 15-Jan-99 20:40:04