■Ⅲー4.攻撃的行動の促進


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●テレビ暴力の模倣

 大部分の行動は、模倣や観察的学習を通して習得される。そして、ある種の暴力的行動はテレビの模倣かもしれない。テレビを模倣した非行の実例は枚挙にいとまがない。ある九歳の子供がシチューの鍋にガラスの粉を入れた。十七歳の少年が、テレビ番組の暴力と殺人のシーンをそっくり再演した。彼は被害者の頭を棒で殴り、のどを切り裂いた。ある十五歳の少年も、テレビ映画で見たとおりの方法で暴行を実演してみた。フロリダ州で起きたある殺人事件の裁判では、被告の少年はテレビの影響を強く受けていたので「仕方がなかった」という弁護側の主張をめぐって、論争が繰り広げられた。ハイジャックのやり方を世間に知らしめた映画「最後のフライト」が放映されたのが原因で、実際のハイジャック事件が急増したことは事実である。ABCテレビが未成年の犯罪者100人を調査したところ、22人までが犯行の方法をテレビから教わったと告白した。

●感覚の鈍麻

 感覚の鈍麻は、日常化したテレビ暴力が人間に与える影響の中で、最も深刻な影響であろう。心理学者は、テレビっ子は鈍いシニカルな態度を示す傾向があると指摘している。テレビ番組の血まみれの殴り合いや撃ち合い、粗暴な言葉に毎日さらされていると、子供は暴力を受け入れるようになる。恐るべきことは、人々がいとも容易に、暴力を一つの可能な手段として認め、さらには、ごく普通の是認しうる手段として受け入れるようになるということである。テレビのニュースで残忍な行為を毎日見ているうちに、実際に路上でそのような行為を目撃しても、平然と傍観してしまうようになるのであろう。

 私たちはテレビ暴力への慣れだけでなく、テレビ視聴そのものによって、反応しないことを条件付けられているようである。「テレビの恐ろしさは、情報を与えられても、われわれはそれに反応せず、のちになって無意識にそれに反応することである。テレビ視聴中は、反応しないように自分自身を訓練している。そして後日、なざそれをするのかも、それが何に由来しているのかも知らずに行動する」。感覚が鈍麻すると、破壊的な攻撃に対して怒りを覚えることもなくなる。苦しみを和らげるある種の麻薬のように、感覚鈍麻は意識的感情を喜びに対してだけ敏感にさせる。

 こうした感覚鈍麻を引き起こすのは、肉体的な暴力だけでない。さまざまな種類の暴力がある。言葉の暴力・知覚的暴力・情動的暴力は、すべてテレビ視聴経験の副産物である。威嚇や侮辱は言葉の暴力である。テレビは、騒音や過剰な視覚的刺激によって、人間の知覚器官にストレスを加える。テレビコマーシャルでは、画面が数秒ごとに変わる。未熟な感覚受容器官にとって、これは不断の暴力的衝撃である。情動的暴力とは、人間の尊厳と価値を傷つけるようなすべてのものに関係している。これがテレビには多量にある。人種差別、女性差別、老人差別などもこれに含まれている。