■Ⅲー5.健康とライフスタイルに 及ぼす影響


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●広告戦術 

 1965年前後、多数の要因によって、子供向け番組がネットワークの重要な収入源になった。第一の要因は、テレビを二台以上所有する家庭が増えたことである。これによって、子供は親とは別の番組を見ることが出来るようになった。第二は、番組のスポンサーとしてではないスポットコマーシャルが普及し、より多くの広告がテレビを利用できるようになったからである。そして第三は、土曜の午前中(ついで日曜の午前中)にかなり「純粋の」子供の視聴者を大量に獲得出来ることが発見されたことである。週末のこの時間帯は、広告放送料が安く、広告の割り当て時間が長く、しかも、従来の漫画本の手法で子供の気を引くことが出来た。


 子供は、大人とは違った受け止め方をする。大人には正しく判断できることも、子供には正しく判断できないかもしれない。このため、子供に正確なメッセージを与えることを広告に義務付ける規則を作るべきだという意見がある。もし「正確なメッセージ」という言葉の意味するところをそのまま厳密に広告規制に反映させるとしたら、広告技術は大変な変革を迫られることになる。現在使われている技術の大部分が、「正確なメッセージ」の観点から、見直されねばならなくなる。たとえば、次のような技術がそれである。

●栄養と学習能力

 テレビは、明らかに子供の栄養と食習慣に影響を与える。そして、栄養状態は健康や知能や学習行動に影響を与える。非常に多くの子供が(大人もそうだが)虫歯や肥満、多動性、過剰緊張に苦しんでいる。これらの症状を引き起こし、悪化させているのは「アメリカの近代的食品」である。  糖分が多く、たんぱく質が少ない加工食品は、毎日テレビで広告されている。1979年にFTCが開いた子供向け広告に関する公聴会で、マサチューセッツ州ケンブリッジの医師、リチャード・フェインブルーム博士は「コマーシャルは家族の健康への脅威である」と証言した。

 多糖質・低タンパク質の食品が子供の健康に害を与える恐れがあることは、よく知られている。砂糖は虫歯の原因になる。多数の研究と専門家の意見は、一日に数回摂取する砂糖が虫歯の最大の原因であるという点で一致している。アメリカでは、子供の98パーセントが虫歯にかかっており、成人は平均18本の虫歯(治療済みを含む)を持っている。

 ある年齢になれば、子供は商業活動の仕組みや賢明な消費行動を学ばなくてはならない。しかし、幼少期はそれらを学ぶべき段階ではない。公共の利益に奉仕することは、子供の権利を守ることも意味するはずである。子供を犠牲にしてまで大きな利潤を得ることを目指して大人が作ったテレビコマーシャルの重大な悪影響から、子供を守らなければならない。