■Ⅲー2.学習と知覚に及ぼす影響


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 多数の要因が知覚過程に影響を与える。その主な要因は、感覚受容器官の正常な働き、頭脳、過去の経験、知能、想像力、入ってくるメッセージの性質、注意を向ける能力である。

 もちろん子供はテレビからも情報を得る。まだ話すことが出来ないのにコマーシャルソングを覚えたり、その意味も分からずにABCを口ずさむ。さらに、子供に数や文字を教えることの出来るこの驚くべきメディアは、同時に行動も教える。どうやってつま先でくるくる踊るか、どうやってカーブを打つか、どうやってカラテキックをやるか、どうやってピストルを使うか、どうやっておもちゃをねだるか、を子供たちはテレビで覚えるのである。テレビは、おそろしく複雑な情報を子供に提供する。しかし、この情報はおおむね断片的で、脈略と意味を欠いている。

 豊富な情報の流れるテレビスクリーンは、人間を直接的経験に参加させるのでなく代理学習の観客としてしまうので、年齢に応じた知覚発達の軌道から逸脱させる、という仮説がある。子供の初期の知的、および感覚的学習の性格とテレビによるコミュニケーションの性格はほとんど相容れないものかもしれない。

 幼児の初期の学習に大人が責任を取り、関与するのは自然のことである。もし子供たちが、明敏で希望に満ちた、賢明な人間に成長することが私たちの願いであるなら、子供たちの学習に基本的に必要ないくつかの条件を満たすために、テレビを最善の方法で利用することを考えるべきである。その必要条件とは、

「信頼しうること」、「行動によって学ぶこと」、「現実についての適正な情報を得ること」、「想像力を発達させ、駆使すること」、「精神と身体の両方十分栄養が与えられること」である。