■Ⅲー1.身体に及ぼす影響


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 テレビが人間の行動に与える影響については、たくさんの推測がなされているが、テレビ視聴が人間の身体そのものの与える影響については看過されがちである。しかし、テレビの習慣的・蓄積的視聴が生物的有機体としての人間に影響、おぞらくは様々な重大な悪影響を与えることは数多くの事実が証明している。テレビの影響に関するこれまでの議論は、もっぱら心理的影響を問題にしていたが、私たちはテレビが子供に与える影響にもっと注意を向ける必要がある。幼年期の成長は、良好的な身体的条件と感覚的インプットに強く依存するからである。

 テレビの習慣的視聴が重大な身体的影響を与えることは、幾多の証拠から明らかである。それは、

①脳波を変化させ、②眼の運動を麻痺させ、③手を動かなくし、④中枢神経を興奮させ、⑤感覚を過剰に刺激し、⑥極超短波の放射で身体に影響を与え、⑦そして発作まで引き起こす。

 これらの影響については、まだ完全に解明されていない。しかし、解明を待つ間私たちは、家族が一週間に何十時間もテレビの前に座っているのを黙認するべきではない。特に子供の場合はそうである。子供は影響を最も受けやすいし、成長の初期段階で、受けた障害はしばしば取り返しがつかないからである。

 私たちにはっきり分かっていることは、子供は身体的活動と、精神への適切な刺激、そして感覚的経験を基本的に必要としていることである。明敏な教育者であるマリア・モンテソリは、身体と精神、環境と知覚の間の関係についてこう述べている。

 これからの印象は、子供の精神に浸透するだけでなく、精神を形成する。これからの印象は体現化される。子供は環境の中にあるものを使いながら自分の精神を豊かにする。  このような精神を、吸収する精神と呼ぶ。その力の大きさは計り知れない。