新しい世界へ

このひとの幾つかの随筆をよんで新しい世界を見たような気がしました。古代ギリシャ世界、キリスト教の世界、ラテン文学の世界、その他いろんな文化の世界に入り込むということがなんとすばらしいものかをはじめて教えてくれたのです。

その先生(上智大学の教授だったこの著者を私はこのように考えていました)も1998年に亡くなられました。

なによりも残念でならなかったのは先生がぜひ小説を書きたいと思い、草稿に着手されたその矢先に逝ってしまわれたこと。そしてその仮題は『アルザスの遠い坂道』、主人公の生き方はシモーヌ・ヴェーユの生涯を下地にするつもりで考えておられたことでした。
(須賀敦子『ヴェネチアの宿』)


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