アイルランド映画紹介

アイルランド的なあまりにアイルランド的な
「ライアンの娘」

アイリッシュ・ソウル・バンド・ムーヴィー
「ザ・コミットメンツ」

天使でもなく聖人でもなく
「マイ・レフト・フット」

D・ラニー、S・シャノンが出演
「友情の翼」

歴史に葬むられた男
「マイケル・コリンズ」

BLACK47の曲が聴ける
「ザ・ブレイク」

男たちの闘いは終わらない
「ザ・ボクサー」

アイルランド全開コメディー
「ウェイクアップ!ネッド」


「ライアンの娘」
デヴィッド・リーン監督 70年。
タイトルからして勝手に牧歌的なストーリーかと思っていたら随分とヘヴィーな内容で参った。
時は1916年、英国の植民地支配からの独立を企てた「イースター蜂起」が失敗に終わった直後のアイルランド西部の寒村が舞台。愛国心、反英精神むき出しの男達が集うパブの親爺ライアンは実は英軍に通じている。そしてその娘も敵である英軍将校と密会を重ねていた。ある日、再び蜂起を企てる一団が村に辿り着いたことがこの親子に悲劇をもたらす。

共同体の精神的な長(おさ)であるカトリック神父、血気盛んな若者たち。あまりに人間臭く描かれる登場人物たちと荒涼とした寒村の風景が相俟って一瞬、ドキュメンタリーかと思う瞬間がある。アイルランド人気質とアイルランドの風土、国家事情でしか語ることのできないタイプの物語だ。

「ザ・コミットメンツ」
ラディー・ドイル原作、アラン・パーカー監督 91年。
アイルランド版「ブルース・ブラザーズ」と言われる同作品、音楽ファンならアイルランドどうこう抜きに楽しめる映画です。でもアイルランドのこと知ってるともっと楽しめます。

ダブリンの若者が「ホワイト・ニガー」を自称し、ソウル・バンド「ザ・コミットメンツ」を結成。バンドにありがちな様々な障壁を乗り越えてデビューまで漕ぎ着けながら呆気なく解散してしまうというお話。

出演しているバンドのメンバーはオーディションで集められ、実際に演奏もしています。ギタリスト役のグレン・ハンサードは現在、フレイムスDCというバンドで活動。その他のメンバーも音楽、映画、舞台で活躍中。何を隠そうあのコアーズもオーディションを受けたらしく、ほんの一瞬ですが ジム兄ちゃんが映っているのを私は見つけてしまいました。

サントラ盤は2枚出ていてR&B、ソウルの名曲が満載です。

「マイ・レフト・フット」
ジム・シェリダン監督 89年。
「ザ・ボクサー」と同じく監督ジム・シェリダン、主演ダニエル・デイ・ルイスのコンビによる作品。アイルランドに実在した画家クリスティ・ブラウンは先天性の小児麻痺のため、かろうじて動く左足で絵を描く。そして彼の治療にあたった女医との恋に破れた時、彼は左足で剃刀を掴んで自殺を図り、また死んだ父のためにパブで諍いが起こると相手のグラスを蹴り上げる。そして最後に彼の左足はひとりの女性のために花を一輪、掴んだ。

ダニエル・デイ・ルイスはこの映画でオスカーを取ったのだが、その演技はうまいとか素晴らしいとか言う以前に「凄い」と思った。子役の演技も同様。

画家として注目され自伝を書いて名も成したクリスティはどこか捻くれていて気難しく皮肉屋である。彼は天使でもなく聖人でもない、車椅子に乗った人間っていうこと。これ当たり前ながら重要なこと。

「友情の翼」
テレンス・ライアン監督 96年。
第二次世界大戦中、中立国であったアイルランドでは沿岸での遭難兵などを捕虜として収容していた。この映画はアイルランドに実在した捕虜収容所が舞台で、そこでは敵同士である英国兵とドイツ兵がいがみ合いながら生活している。ある日、空中戦の末、アイルランド国内に墜落した英国兵とドイツ兵がここに収容され、一人のアイルランド女性をめぐって恋の鞘当てあり、脱走作戦ありのストーリー。

この映画でヒロインを演じているのは「リヴァーダンス」のプリンシパルも務めたジーン・バトラー。ワン・シーンだけですがパブでのダンスシーンがあり、彼女の素晴らしいステップを拝むことが出来ます。そしてそのシーンでミュージシャン役で出演、演奏しているのがドーナル・ラニー、シャロン・シャノン、ナリグ・ケーシー。曲はD.ラニーのソロアルバム2曲目「Coast River」だと思う。D.ラニーは時代考証もあってかブズーキではなくバウロンを演奏。オールド・ファッションで巻き巻きヘアのシャロンちゃんもかわいいっす。

エンディングで使われている「She Moved Through the Fair」は定番の伝承歌。

「マイケル・コリンズ」
ニール・ジョーダン監督 96年。
アイルランド独立における陰の最重要人物マイケル・コリンズの半生を描いた作品。同国の歴史など基礎知識がないと分かりにくい部分もありますが念願の独立の裏にいかに多くの男の血と女の涙が流されたかが窺がい知れます。主演は「シンドラーのリスト」のリアム・ニーソン。共演はジュリア・ロバーツ、アラン・リックマン。

シネイド・オコナーの唄う伝統歌が緑の大地の映像に栄えて美しい。

共に独立の為に英国支配と闘いながら最後には袂を分ち、初代大統領となったデ・ヴァレラと歴史の闇に葬られたコリンズ。多くの犠牲を払ったアイルランド独立は残念ながら新たな闘争の始まりでもあったのです。

「ザ・ブレイク」
ロバート・ド−ンヘルム監督 96年。
「クライング・ゲ−ム」主演のスティーブン・レイの原案/主演によヴァイオレンス・ドラマ。北アイルランドの刑務所を脱獄したIRA政治犯がニューヨークに渡り、グァテマラの反政府グループと知り合い彼等の計画に荷担するというストーリー。

展開に無理があるし、深く考えさせられるような話でもなく映画としては「?」です。

主人公がニューヨークに辿り着いたシーンで流れて来るのがアイリッシュアメリカンロックバンドBLACK47の「Green Suede Shoes」。シーンにバッチリはまっててカッコイイっす。あと見どころは冒頭にだけ出て来る主人公の夫人役が「コミットメンツ」コーラス隊の黒髪のコ、マリア・ドイル。相変わらずイイ女です。

「ザ・ボクサー」
ジム・シェリダン監督 97年。
和平協定に沸く1997年の北アイルランドが舞台。服役を終えた元IRA活動家がボクシングを通し、和平支持を訴えるが闘争派の仲間との確執あり、元恋人との横恋慕ありとドラマ仕立てになっています。

迫力のボクシング・シーン、俳優たちの表情など丹念なカメラ・ワークが悲運の地に生きる人々の日常を浮き彫りにしています。

和平への道を歩み出した北アイルランドですが長年の闘争が生み出した憎悪は今も悲劇を生み続けているのです。

「ウェイクアップ!ネッド」
98年。日本公開 99年
アイルランドの片田舎、全村民50人余りの村の誰かがに10億円の宝くじに当選。おこぼれに預かろうとする爺さん二人が究きとめた当選者、ネッド爺さんは当選のショックで昇天。ダブリンからやってくる調査員を欺く、村を挙げてのネコババ大作戦が展開されるが.....。

英米でもヒットし、日本公開もされたアイルランド全開コメディー。徹底的に笑わしに掛かってるので何も考えずに観るのが宜し。ラストはこれでええのか?とも思うが人間万事塞翁が馬。コミットメンツのトランペッター、唇のジョーイのお母ん役の人がまったく同じメイクで出てるのを発見。

音楽の方も全開でホットハウスフラワーズのリアム・オ・メンリィが歌うエンディング、ウォーターボーイズの代表作「フィッシャーマン・ブルーズ」、ナリグ・ケイシーのフィドル、ジョン・マクシェリーのパイプスとてんこ盛り。

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