ALAN STIVELL
  1. Brian Boru(1995)
70年代から活躍するフランスのケルト圏ブルターニュに伝わるブレトン・ハープの演奏家/トラッド・シンガー、アラン・スティヴェールの95年のアルバムでアイルランド/スコットランドの伝統曲を取り上げている。ドラムスやE・ギター、キーボードも導入して随分モダンな造りの曲もあるが、ヴォーカル・スタイルは力強く味わい深い。

ALTAN

  1. The Best Of Altan(1997)

現役トラッド・グループで最も成功しているバンドであろうアルタンはモレート・ニ・ウィニーとフランキー・ケネディのデュオを母体にスタート。メンバーを補強し、ドーナル・ラニーのプロデュースを得て、モダンなセンスを持ち合わせた良質のアルバムを次々に発表している。94年、F・ケネディは他界するもモレートを中心にバンドは一層活躍している。モレートの透き通るような美しいヴォーカル曲とフィドル、フルート、アコーディオンをメインにしたジグやリールの対比、洗練されたアレンジ・センス。このベスト盤はそんなアルタンの魅力を十分に堪能することが出来る。またライブを収録したボーナス・ディスク付。お得です。

ANDY IRVIN & DIVI SPILLANE

  1. East Wind(1992?)

元プランクシティー、現パトリック・ストリートに参加しているアンディ・アーヴァインと多方面で活躍するイリアン・パイプス奏者デイヴィ・スピラーンの共演盤。
A.アーヴァインが収集した東欧の音楽をD.スピラーンの巧みな演奏で再構築した意欲作にして傑作。 ビル・ウィーランも参加しており、このアルバムでの音楽スタイルが「リヴァーダンス」の誕生に 多分に寄与していると思われる。

ARCADY

  1. After The Ball(1991)
  2. Many Happy Returns(1995)

デ・ダナンの創設メンバー、ジョニー・マクドーナが結成したアーカディ。1stのフランシス・ブラックの可憐なヴォーカルもよいが、2.で迎えたニーヴ・パーソンズの力強い歌声により王道とも言えるトラディショナル・スタイルが一層、映えている。2.にはブレンダン・パワー(ハーモニカ)、ホットハウスフラワーズのリアム・オ・メンリィが参加。

BART JANSCH

  1. When The Circus Comes Town(1995)
この人はスコティッシュです。元ペンタングル。トラッドというよりフォーク寄りのスタイル。タイトル曲が、クラプトンのアンプラグドに収録されていた曲(ビデオのみ)のオリジナルかと思って買ったら全然別モンでした。でも渋いブルースで◎。

BEGLEY & COONEY

  1. Meiteal(1992)
酪農業の傍ら音楽活動を続けるアコーディオン奏者、シェイマス・ベグリーとメルボルン出身のギター/ベースプレイヤー、スティーブ・クーニーのデュオは現在アイルランド最強でしょう。今もゲール語が話される地域に育ち生活を送るS・ベグリーの演奏と歌にはやさしさと暖かさが充ちている。それをもり立てるS・クーニーのAギターと特にベースプレイは(アイルランド音楽においては)斬新でありながら何も損なうことなく、新しいスタイルを生み出すことに成功している。

BILL WHELAN

  1. The Seville Suite(1992)
  2. Riverdance(1995)

「リヴァーダンス」の音楽を担当し、昨今のアイルランド・ブームの立て役者でもあるビル・ウィーラン。1.は1601年のアイルランド/スペイン連合軍と英国軍とのキンゼールの戦いを題材とし、セリヴィア万博時に制作された作品。D.スピラーン、スペインはガリシア地方のグループ、ミジャドイロをゲストにケルト音楽とオーケストラサウンドの融合を果たしている。2.は言わずもがなの「リヴァーダンス」のサントラ盤。

THE BOTHY BAND

  1. 1975 The First Album(1975)
  2. Old Hug You Have Killed Me(1976)
  3. Out Of The Wind Into The Sun(1977)
  4. Afterhours(1978)

プランクシー解散後のD・ラニーが参加したのがこのボシー・バンド。フィドル、ティン・ホイッスル、フルートそしてイリアン・パイプスのたたみ掛けるような怒涛のユニゾンメロディをブズーギとギターのカッティングとハプシコードによるリズムが煽りたてる壮絶な演奏を聞かせたかと思いきや一転、透きとおる絹のやうな美しい女性ヴォーカル曲が聞く者の体を包み込む。この呼応し合う両極端のスタイルはその後のD・ラニーのプロデュース業のなかで、その時々のアーチストに符合した形で現出してくることとなる。
1.のフィドルはトミー・ピープルズ。独特のアタックが効いたプレイは一度ハマると病み付きになる。いずれも傑作だが4.のライブ盤は全活動の集大成とも言うべき完成度を誇る。

CHRISTY MOORE

  1. Unfinished Revolution(1987)

アイルランドのボブ・ディラン、クリスティ・ムーア。朴訥として力強い、乾いた声で民族の悲哀と解放を歌い放つ。伝統音楽をベースとしながらもそのスタイルはかなりフォークロック的。プロデュースは朋友、ドーナル・ラニー。ポーグスのカバーを含む。

CLANNAD

  1. Pastpresent(1989)

エンヤも一時期在籍していた彼女の兄姉たちのグループ、クラナド。伝統曲を演奏するローカルグループとしてスタートしたが次第にシンセを導入するなどポップセンスを発揮し、82年「ハリーズ・ゲームのテーマ」がゲール語の歌で始めてイギリスでトップテン入りし、その曲を聴いたU2のボノが感銘を受けて共演を申し込んできたという(後に実現)。その後、「ラスト・オブ・モヒカン」「ロビンフッド」など映画のテーマも手掛けアメリカでも人気を博す。最近はまた初期のトラッド路線に戻ってきている。上記はその遍歴を網羅したベスト・アルバム。

DAN AR BRAZ

  1. Heritage Des Celtes(1994)

アラン・スティベールのバンドで名を上げたブルターニュのギタリスト、ダン・ア・ブラース入魂の一作。D・ラニーと手を組み、ブルターニュ、アイルランド、ウェールズ、スコットランドの最高のミュージシャンを集結し、タイトル通り「ケルトの遺産」を現代においてこの上ないスタイルで体現して見せた。D・ラニーの他、ナリグ・ケイシー(フィドル)、カパーケリーのカレン・マシスンなどが参加している。

DE DANNAN

  1. Ballroom(1987)

歴代ヴォーカリストにメアリ・ブラック、ドロレス・ケーン、モーラ・オコンネルと錚錚たる面々を擁するデ・ダナン。伝統音楽を最も純粋に現代に昇華させているグループと言える。
上記のアルバムはヴォーカルはドロレス・ケーン。

DONAL LUNNY

  1. Donal Lunny(1987)
  2. Donal Lunny Coolfin(1998)

C・ムーアと組んだプランクシーで伝統音楽復興ののろしを上げ、ボシー・バンド、ムービング・ハーツの中心人物として活躍、数知れないプロデュースを手掛けてきたドーナル・ラニーだがソロ名義アルバムは上記の1.のみ。生楽器のみの編成によるライブだがその音圧とドライブ感はそんじょそこらのハードロックなぞ軽く凌いでしまう迫力。
2.は「Common Groud」の成功を受け来日公演もしたメンバーを中心に製作されたアルバム。トリッキーで強烈なリズムアレンジは彼の真骨頂。

ENYA

  1. The Memory Of Trees(1995)

この項で最も(唯一)有名なのはこのエンヤでしょう。彼女の楽曲はトラディショナルと呼ぶよりも独自のスタイルと言うほうがふさわしいのですが、残念なことに最早ひとつのパターンとなってしまっています。プロモーション来日の折、テレビでCDをバックに口パクで演ってましたが、あれが生演奏だったら見直したんだけどね。

KiLA

  1. Handels Fantasy(1992)
  2. Mind The Gap(1995)
  3. Tog e Go Bog e(1999)
  4. Lemonade & Buns(2000)

Lunasa(ルナサ)と共に、ネオ=トラッドの最先端を行くグループ「キーラ」。スーパープレイヤー集団ルナサが卓越した個人技でサウンドを研ぎ澄ませて行くのと対象的にアフリカやアラビア音楽の要素を貪欲に取り込んでアイリッシュトラッドの新たな可能性を拡げている。中心人物、ローナン・オスノディのゲール語のハスキーヴォーカルも味わい深い。1. はカセットのみでリリースの1st。トラッド曲を取り上げる一方ファンクっぽい曲もありアヴァンギャルド。2000年にCD化。2. は1stの路線をさらに推し進めサンプリングまで駆使している。3. と4. はアメリカの名門レーベル、グリーンリネットからリリースでかなり洗練された内容になっている。
>KiLA official site

LUNASA

  1. Lunasa(1998)
  2. Otherworld(1999)

現役のインスト・バンドとしては最強と思われるルナサのメンバーは、ショーン・スミス(フィドル、ホイッスル)、ドーナル・ラニー・バンドで来日もしているジョン・マクシェリ(イリアン・パイプス、ロウ・ホイッスル)、元ウォーターボーイズ→シャロン・シャノン・バンドのトレヴァー・ハッチンソン(ベース)、同じくシャロン・バンドのドノ・ヘネシー(ギター)、FLOOK!というバンドでも活動しているマイケル・マクゴールドリック(フルート、ロウ・ホイッスル)など凄腕プレイヤーばかりで「スーパーバンド」とも言える布陣。
パーカッションを使わずともリード楽器の卓越したプレイとギターによるバッキングそしてアイルランド音楽には珍しいベースの存在が独特のグルーヴを生み出し、怒涛のジグやリールを決めたかと思うとスローエアを情緒たっぷりに聴かせてくれる。
99年には2ndを発表。ジョンとマイケルはゲストとクレジットされ、結成時のメンバー、ケヴィン・クロフォード(フルート、ホイッスル、バウロン)が再参加。キリアン・ヴァレリー(パイプ、ホイッスル)を加えた布陣で2000年3月に来日。キリアンもその後、正式メンバーとなる。
日本語公式サイト(MUSIC PLANT)

MAIRE BREATNACH

  1. Angels Candles (1993)
  2. The Voyage Of Bran (1994)

数多くの一流ミュージシャンのバックを務めるモイア・ブレナックは優れたフィドラーであると同時に優れたコンポーザーでもある。クラシックの要素を取り込んだ現代的なトラッド・ミュージックを展開している。レコード会社との契約問題から2作とも後に再録音されている。

THE MARY CUSTY BAND

  1. The Mary Custy Band(1996)

シャロン・シャノンの旧友でアルバム参加もしている女性フィドラ−、メアリ・カスティー。ロックやレゲエのスタイルを導入した彼女のバンドのこのアルバムはインディーリリースながらアイルランド国内でヒットしたそうです。シャロンに通づる現代的感覚を持ち合わせていますが、作風は遥かに素朴。彼女の姉が経営するカスティーズ・ミュージックショップのサイトから購入できます。詳細はこちら。

MOLLOY/BRADY/PEOPLES

  1. Molloy/Brady/Peoples(1977)

ボシー・バンド〜現チーフテンズのマット・モロイ(フルート)、トラッドからロックに転向したポール・ブラディ(ヴォーカル&ギター)、ボシー初代フィドラーでアイルランド最高のプレイヤーと称されるトミー・ピープルズの3人によるアルバム。
名人が挙って作り上げたアルバムが悪かろうはずがありません。傑作です。P.ブラディがヴォーカルを執るのが1曲でその他はジグやリールのナンバー。M.モロイのやさしくふくよかな音色のフルート、T.ピープルズの力強く情に満ちたフィドルをP.ブラディのアコースティック・ギターがシンプルなバッキングで彩り、支えています。

MOVING HEARTS

  1. Moving Hearts(1981)
  2. Dark Side Of The Street(1982)
  3. Live Hearts(1983)
  4. The Storm(1985)

D.ラニー、C.ムーア、D.シノット、D,スピラーンという錚々たるメンバーから判断してかなり期待してしまうムーヴィング・ハーツですが楽曲も音も手放しで絶賛という訳には行きません。トラッドの要素は少なくてロック的なのはいいけどスタイルとしては平板。ドーナル・ラニーもブズーキではなくほとんどキーボード をプレイしているのですがこの音がいかにも80年代といった赴きでなんかダサい(失礼)
全般にクリスティ・ムーアの政治色の強いソロにゴテゴテした色付けをした感じです。このバンドが飛躍のきっかけになったデイヴィ・スピラーンをフィーチャーしたインストはそれなりに楽しめます。特にバンドが 一旦解散した後にD.スピラーンの呼びかけで作られた4.はデクラン・マスターソンとのダブル・イリアン・パイプスで押し捲る傑作インスト盤。

NIAHM PARSONS

  1. Loose Connections(1992)
  2. loosen up(1997)
  3. Blackbird & Thrushes(1999)
  4. In My Prime(2000)

アーカディの2ndでヴォーカルを務めているニーヴ・パーソンズ、1.と2. では当時の夫でベーシストのディー・ムーアと若手最高のイーリアン・パイプス奏者ジョン・マクシェリーを中心としたバンド「ルース・コネクションズ」をバックにトラディショナルからまったくのポップナンバーまで力強く伸びやかなヴォーカルを聴かせる。ジャズっぽいインストやブライアン・ケネディとのデュエットも聴きどころ。
3. と4. は全編トラッド。2000にリアム・オ・メンリィ、スティーヴ・クーニーと共に初来日。素晴らしい歌声を聴かせてくれた。

PAUL BRADY

  1. Welcome Here Kind Stranger (1978)
  2. Nobody Knows the best of (1999)

アンディ・アーヴァインらとのトラッドでの活動後、ロックに転向したポール・ブレイディはボニー・レイットなどへの曲提供でも知られる。1. はロック転向前の唯一の全編トラッドのソロ作品。深みのあるヴォーカルが堪能できるトラッド史上最高のアルバム。2. はロック期を総括するベスト盤。2曲の新録のトラッドナンバーを含み、しかもその名演がつとに有名な「ポンチャートレインの湖」と「アーサー・マクブライド」とあってトラッド復帰が期待される。

PHIL CALLERY

  1. From The Edge Of Memory (1999)

「ウェイク・アップ!ネッド」のサントラなどにも参加している男声ヴォーカルグループ「ボーイズ・オブ・スカッド」のフィル・キャリーのソロ・アルバム。クリスティー・ムーアに通ずる朗々と歌いあげるタイプのシンガーだが、曲によってはバート・ヤンシュなどのスコッチ・フォークに近い雰囲気もある。S. クーニー、ブライアン・ケネディ、マリア・ドイル、リアム・オ・メンリィ参加。

PLANXTY

  1. Planxty(1973)
  2. Planxty Collection(1989)

C・ムーア、D・ラニーを中心に結成されたプランクシティーは農村に残る伝統歌をフォークソング的なアプローチで復活させることにより、現在のアイルランド音楽隆盛のひとつの流れを生み出した。1.はその記念碑的ファースト。

SOLAS

  1. The Words That Remain(1998)

ソーラスはマルチプレイヤー天才シェーマス・イーガン始め、若手アイリッシュ・アメリカンを中心に名人揃いで、バンジョーやマンドリンも使い伝統音楽を実に軽やかに現代的に演奏してみせる。アメリカという土壌がそうさせるのかそれとも録音環境のせいかアイルランドのグループに比べると「音が乾いている」印象がある。カラン・ケイシーの可憐なヴォーカルもよい。
デビュー以来、ビルボードのワールドミュージックチャートに登場するほど人気を博しており「Words〜」は好調振りを示した3作目。取り上げているのもアイルランドのトラディショナルからアメリカン・フォークまで幅広い。

SHARON SHANNON

  1. Sharon Shannon(1991)
  2. Out The Gap(1994)
  3. Each Little Thing(1997)
  4. Diamond Mountain Sessions(2000)

一時期、ウォーターボーイズにも参加していた若手女性アコーディオン奏者シャロン・シャノン。 そのスタイルはトラディショナルの範疇に収まらず、2.ではレゲエ・プロデューサー、デニス・ボーウェルを向かえるなど柔軟。年輪を重ねた名人のどっぷりトラッドもいいですが、ロックの洗礼も受けている若い世代の音はやはり親しみやすいですね。
4. では実妹もメンバーに含むバンドでスティーヴ・アール、ジャクソン・ブラウンなどをゲストヴォーカルに迎えている。

TOMMY PEOPLES

  1. The Quiet Glen / An Gleann Ciuin(1998)

ボシー・バンドの初代フィドラ−で現在はクレアに隠って活動している、トミ−・ピープルズ。ボシー脱退後、ポール・ブレイディ等と傑作アルバムを発表しているがこれは彼が完全自主制作した18年振りのソロアルバム。トミ−について、またこのアルバムについては守安 功氏著「アイルランド大地からのメッセージ」を参照にして頂きたい。私はこのアルバムと守安氏に本を読んで「演奏家にはキャラクターが必要とされる」という事に確信を持った。例えばローリングストーンズのキース・リチャ−ズのギターは表面的に判断すれば「ヘタ」である。しかし、そこには絶対キースにしかだせない音なりタイミングといったものがある。これと同じものがトミ−・ピープルズのフィドルにはある。つっこみ気味のリズム、弓が弦にひっかかるような音。全てが彼のキャラクターなのだ。

THE TULLA CEILI BAND

  1. A Celebration Of 50 Years(1996)

アイルランド音楽の深淵地、東クレアで活動しているダンス伴奏専門バンド、タラ・ケーリー・バンドの結成50周年アルバム。自ら演奏もし、プロデュースしているのは現在、若手No.1と言われるフィドルプレイヤー、マ−ティン・ヘイズ。そしてこの伝説的名バンドのリーダーは彼の父、P.J.ヘイズである。このバンドについては守安 功氏著「アイルランド大地からのメッセージ」を読んでいただくのが一番。ブズーキなど他国の楽器やロックのスタイルを取り入れたトラディショナルも刺激的だけど、ダンス音楽として発展してきた音楽をダンス音楽として演奏しつづけるこういうバンドにも耳を傾けてみてはいかがでしょう。とんがってはいませんがどこまでも心地よいですよ。