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 2001/10/28

 ダメ人間から「おまえはダメだ」と言われるほど悔しいことはないのですが、今の私には言い返す気力すらありません。実際その通りだしー。ふーん。

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 bbsに書きましたけど、実はスピード違反でキップ切られまして。まだ違反金払ってないんですけど、懐を痛めるのはなんか悔しいので、聴かなくなったCDを何枚か売ってきました。暴力温泉芸者とか、電気グルーヴとか、かせきさいだぁとか、ネロリーズとか、コーネリアスとか。あとで後悔するかしないかギリギリのラインナップで。

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 ネットで注文していたROVOのオフィシャルブートレグ 『LIVE at LIQUID ROOM 2001 5,16 "MAN DRIVE TRANCE"』が届きました。なんでもコレ今までライヴ会場のみで販売していたヤツだそうで(田舎モノの私は最近までその存在を知らなかったのですけど)、それがこうして聴けるとはなんとも嬉しい限り。全4曲、ということでライヴ全録音ではないのかもしれませんが、当日の雰囲気は十二分に伝わってくる内容になってます。特に後半の2曲「CISCO」「KoNuMu」でのグチャグチャとした高揚感は、スタジオ盤では味わうことができなかった域にまで達していてたまらなくキモチイイです。通して聴いていると終始ぐるんぐるんと振り回されるような感じ。もしかしたらどのスタジオ盤よりも好きかもしれないです、コレ。

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 最近は新譜もさほどチェックせず、聴いているものといえばブリティッシュ・フォーク、ブリティッシュ・フォークばかりです(ていうかMemoryLabのコンピ、仙台ではまだ売ってませんよsasakidelicさん。)。聴き方としては、新たに買い求めてみたり、あるいは数年前に購入したものを引っ張り出してみたりといろいろなんですが、ともかく寝ても覚めてもどこかで優しいアコースティックサウンドが鳴っているような、そんな毎日を過ごしております。えーとそういうことで今日から1枚づつ、そしてちょっとづつ、ご紹介。


 #1 Vashti Bunyan 『Just Another Diamond Day』(1970)


 ヴァシュティ・ブニヤンが残した唯一のアルバム。ヴァシュティって誰?ゴメン、私もよく知りません。オリジナルアナログ盤は幻の作品とか言われて高値で取り引きされていたとか、ンな情報はどうでもイイです。淡く儚い彼女の歌声、必要最小限の彩りをみせる演奏、そして全体を包むのはモノトーンの空気。個人的なハイライトは福間未沙 「風車」(『君の友達』収録)の原曲である「Diamond Day」ですが、そのほかの曲もトラッドとかフォークとかそんなカテゴリーだけでは語りきれない美しいメロディーと優しい演奏ばかり。私はこの作品にほんの少しだけ淡い暖色を付けたのが『君の友達』じゃないかと思うのです。


 2001/10/23

 17:00頃窓の外にフッと目をやると、空に「白」「桃」「紫」「青」「紺」「黒」と綺麗なグラデーションが描かれていました。こんなのが見られるのはきっとこの季節だけでしょうね。

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 ソロ作だけでなくペンタングルやバート・ヤンシュとのコラボレーション曲まで収録したジョン・レンボーンの2枚組ベスト 『the Transatlantic anthology』を店頭で発見。1,600円という値段に我が目を疑いましたが、発売元がCastle Musicということで一応納得して購入。


 薄鼠色のメロディーに、そこから落ちてくる雨粒のようなギターの音色。先に購入したバート・ヤンシュとのコラボレーション作を聴いたときも思ったんですけど、彼の作品から奏でられる音色(ギターだけでなく、そのほかすべての...)って、ヨーロッパあるいは日本のエレクトロニカに通ずるものがあるような気がします。今の私がmumと並行して彼の作品を聴くことができるのもそんな理由なのかも。

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 こうやって自分でサイトをもつようになってから気づいたのですが、毎年この季節は「からっぽ」になっていることが多いようです、私。言ってみれば、体中の細胞が冬眠ならぬ秋眠をしているような、そんな感じで。でもこういう時のほうが感情が穏やかで人当たりも良く、対外的には好印象だったりするんですよね。はたしてこれで良いのか、よく分かんないんですけど。


 2001/10/18

 えーとまた仕事で山奥に行ってきました。今回は発電所の見学です。「発電所入口」の看板が見えたところで車を止め、そこから人気のない山道を川縁に向かって降りていき、取水堰や発電所建屋を写真に撮る、こんなことを3件ほど繰り返し。ケータイのアンテナを見たら圏外になってるし、カモシカの親子と鉢合わせするし(マジで)、またとんでもないところに来ちゃったナー、なんて思いながら仕事してました。


 しっかし、人の気配がまったく感じられない空間てのがこんなにも不安感を抱かせるものだとは思ってもみませんでしたね。考えてみれば、普段自分の部屋に独りでいるときだって、隣の物音や上の階の足音は聞こえてくるものです。「独りが好き」なんて言いながらも、知らず知らずのうちに人の気配というホワイトノイズに安堵し生活している自分。ああまったくなんて生ぬるいロンリネス。

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 遊びに来た友人が私の部屋を見るなり「…ヤニが凄いね。」とぽつり。ハッと天井を見上げてみると、…うわーホントだ(笑)。元の色を知っているだけに、友人以上に己が驚いてしまったり。


 ということで今日は空気清浄器なんてものを買ってきてしまいました。ええ、これ以上壁は汚しませんよという小さな意思表示で。ええ、「僕は煙草をくわえ一服すると部屋のこと考えるんです」と。もっとも、煙草をやめるという選択肢がない時点で根本的に何か間違っているとは思いますけどね。

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 今さらながらブリジット・フォンテーヌ 『comme a la radio』を聴いてみたり。いやぁなんかなんか凄い作品ですね、ブリジットの声もアート・アンサンブル・オブ・シカゴの演奏もスリリングで緊張感があって。でもそれ以上に今の私にはアレスキーのパーカッションがググッと響いてきました。なんだかロバート・ワイアット 『THE END OF AN EAR』とか久下惠生のソロアルバムとかと同じで、リズムがメロディを奏でているような、そんな雰囲気で。


 2001/10/14

 大学を卒業後「やはり音楽に関わる仕事がしたい!」と中古CDショップに就職した我が弟。しかし根っからの生真面目な性格が災いしてか、彼はその裏で渦巻く汚い世界を受け入れる事ができず、昨年あたりから独り藻掻き苦しむようになっていました。そしてその苦しみがピークに達した今年初め頃、彼はプライベートで音楽をまったく聴かなくなったとのことで、たまにする電話の声もどんどんとトーンが低くなるばかり。まぁ彼のしていた仕事に限らずどんな世界にも矛盾というのは存在すると思うのですが、彼は音楽を愛するがあまり、その矛盾を受け入れることができなかったのでしょう。しかしそんな彼に対して私は「残念だけどもう辞めた方がいいよ。」とアドバイスにもならないアドバイスを繰り返すだけ。話を終え、毎回毎回受話器を置くたびに私は「ホントにこんなことでいいのかな?」などと自問自答するばかりでした。


 だけどそんなとき、私はフッと目にしたモンドくん日記に次のような記述を見つけたのです。


 ノン・スタンダード・レーベルでのデビューが決まって、2年目の春、会社を辞めた。当時、会社を辞めたことに細野さんはひどく怒った。会社に勤めながら、自分の好きな音楽を作るのが一番だ、と言ってくれた(今でも時々、言う)。音楽のきびしさ−好きな音楽を守ることが、どれほど難しいか−を細野さんはよくわかっていて、自分の好きな音楽を守るために、日曜音楽家であることを、ぼくに強く勧めてくれていたのだと今はわかる。
(鈴木惣一朗「モンドくん日記」1999年7月20日より引用)



 私はコレを読んで思いました。人は二番目に興味のあること・二番目に好きなことを仕事とするのが一番幸せなんじゃないかと。世の中いろいろ納得いかないことはたくさんあって、必ずしも自分の思い通りになるとは限りません。そして好きなことであればあるほど自分の中で守るべきものは大きくて、思い通りにならないときの苦しみは尋常なものではなくなってきます。だから「仕事」とするならば、ある程度その矛盾を受け入れる余裕がもてるものでなければハッキリ言ってやっていけないと。鈴木惣一朗氏の日記を読んでそう思ったのです。


 もっともこれって受けとる人にとっては明らかに負け組的な結論かもしれません。しかし、それが正しい苦しみかそれとも単なるわがままかの判断はまず置いておくとして、仕事とプライベートとの区別なく働いている人の「苦しみ」を見ていると、私はやはりそんな気がしてしまいます。わがままにその苦しみを理不尽なまま他人にぶつける人もいます。そして我が弟のようにつぶれてしまう人もいます。果たしてそれがどれほど正常なものと言えるでしょうか。悔しいけど世の中そんなに思い通りにはいかないのです。


 ちなみに私は、今の仕事がもっともやりたかったものではありません。でも結果としてそれで良かったと思ってます。だって一番好きなものは誰からも侵害されることなく、そして誰にも迷惑をかけず大切に育んでいきたいですもの。だけどイコール仕事が嫌いというわけでもないのです。むしろ「一番でないけれど好き」と言えるものだと思います。そしてそんなバランスの中で仕事ができるっていうのがホントに幸せだと思ってます。

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 弟から転職した旨の電話がありました。今度の仕事は音楽とはまったく関係ない、建材メーカーの営業だとのこと。最近は音楽も聴けるようになったとのことで、久しぶりに音楽談義に花を咲かせることができました。現在彼はビートルズ 『for sale』の奥深さに改めて感動している様子。「なんか中学生に戻ったみたいだよ」と嬉しそうに話す彼の声を聞いて、私は「まぁこれはこれで良かったのかもしれないな」と少しだけ安心することができたのでした。

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 それじゃ私もちょっと原点に帰ってみようかなとバート・ヤンシュ&ジョン・レンボーン 『BERT AND JOHN』を購入。これが作られた66年といえばジョンの頭の中でペンタングル結成のアイデアが誕生しつつあった頃でありまして、今聴くと荒削りながらもペンタングルの習作的な要素もちらほらと耳にすることができます。それにしてもこの2人のギターって、緩急そして強弱の付け方が絶妙で、一つ一つの音にまったく無駄がないですね。うーん凄いっす。


 2001/10/09

 久しぶりの更新なのかな?なんか最近バタバタと過ぎていって自分では全然そんな気がしません。


 戦争が始まったのに先月のような不安感がないのは、ただ単に私がTVを観ていないからなのか。はたまたこのような状況に慣れてしまったからなのか。あるいはどこかで心の準備ができていたからなのか。


 いや、きっと忙しさにかまけて現実から目を逸らしているだけ。うーむ。

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 mum 『YESTERDAY WAS DRAMATIC - TODAY IS OK』とマヘル・シャラル・ハシュ・バズ 『Souvenir de mauve』を購入。


 アフターアワーズの付録CDを聴いて気になっていたmum(ムームと読むらしい)の1stは、ひんやりとしたエレクトロニカにアコーディオンやグロッケンシュピールなどの生楽器が加わる、牧歌的で美しい作品。スピーカーから流れてくる音色に耳を傾け目を閉じると、金子修介監督作品『1999年の夏休み』で表現されるような風景に囲まれてしまうような、そんな感覚に陥ることができます。「昨日はドラマティックだったけれど、今日は無難な一日になろうとしていた。(ライナーより)」というネオアコ世代の涙腺を刺激するタイトルも最高。これはしばらく愛聴しそうだわ。


 マヘルの最新作(?)はどこまでもマヘルチックなヨレヨレサウンド。私こういうのやっぱり好きですわ。ただ中盤のピアノインプロはちと退屈でしたが。3枚組のやつも買っちゃおうかなー。マジで。

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 クッキーシーンの付録CDでジム・オルークの新曲を聴いたのですが、結構激しいギターリフにモサモサとしたドラミングと、いろんな意味で意表をつく作品でした。甘いメロディやブリッジはいかにも彼らしい感じがするのですが、正直言ってあまりピンとこなかったなー。はたしてこの曲が新作の中でどのような位置づけなのか、ちょっと期待ちょっと不安。


 つーか新譜のジャケ、また友沢ミミヨらしいですね。私は嫌いじゃないんだけどー(笑)。


 2001/10/03

 なんかもう秋ですね、いつのまにか。

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 明治期に造られた鉄道隧道(トンネル)を見に行きました。もちろん(?)仕事で。3月の廃坑に始まり、水門・ダムときて今度はトンネル。なんか冷静に考えたら心霊スポットみたいなところばかりを巡っている私の仕事(笑)。


 で、今日見てきたトンネルは根廻隧道っていう東北本線開通時(明治20年頃)の遺構。 明治といえばコンクリートはまだ普及していませんから、当然の如く内部のアーチもポータル(入り口部分)もすべて煉瓦造。もともとは赤茶色だった煉瓦も、100年という年月によりその色は黒ずみ、あたかも土壌と同化したような雰囲気を醸し出していました。細部をよく見ると煉瓦が所々崩れているところもあったりと、往時を思わせる凛々しさはもはやこのトンネルには見いだすことはできません。だけどなぜでしょう、私はこの煉瓦構造物に対して「汚い」とか「見苦しい」とかそんな感情をまったく抱くことはありませんでした。…いや、むしろ「美しい」とさえ思えてくるような、そんな佇まい。そう、これこそまさに「年月が作る美しさ」なのかもしれません。


 「格好良く年をとりたい」…「軽薄短小」を良しとする私たちのライフスタイルにそんな未来はあるのでしょうか。「長生きなんてしたくはない」…そんなこと言ったって結局は生きてしまうんだよ。「格好良い」って何だ?「美しい」って何だ?いろいろな疑問で頭の中が一杯になりながらも私はシャッターを押し続けました。今こうやってこの構造物を記録に残すのがその解答であると言わんばかりの勢いで。


 …と、気どったことを書いてますが、ホントは「幽霊とか写っちゃったらどーしよー」とビクビクしながら写真とってました。いやでもやっぱ恐いっすよー、トンネルって。

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 ティン・パン・アレーの『キャラメルママ』とシェシズの『約束はできない』を購入。まったく、なんつー組み合わせだ…。


 ツジコノリコいまさらイスラエルが気になる今日この頃。でも仙台では売ってませんのよ。


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