「炎の玉(ファイアー・ボール)!!」
戦いの幕開けはティアの炎の玉(ファイアー・ボール)から始まった。ティア達が戦い始めると、俺達は少し離れた所まで動いた。
けど、動きながらでも攻撃は出来る。
「氷の柱(アイス・ポール)!!」
奴の足元から一本の氷の柱が生えた。
「甘い!!」
ところが、奴は生える前にその場を動いてあっさりかわした。
でも、それも予測済み。
「水神の吐息(ウンディーネ・ブレス)!!」
氷系の術で水神(ウンディーネ)の力を借りて行なう術で有効距離がかなり広範囲でこの街中じゃかわすことは出来ない。
「火神の吐息(サラマンダー・ブレス)!!」
さあっ!!!
奴の唱えた術で、俺の放った術は大量の水蒸気を残し、奴の術と相殺した。
まずい………これは………。
この水蒸気が濃い霧になって、視界を悪くしていた。
こっちの視界も悪ければ奴の視界も悪いので、要は奴が俺の姿を確認するより早く、俺が奴の姿を確認すればいい。
「風の刃(カッター)!!!」
まずい、奴の方が先に見つけたか!!
水蒸気を切り裂きながら、風の刃(カッター)はこちらに飛んできた。
よっしゃ!水蒸気が逆に利点になった!!
俺は水蒸気の弾かれ方を見て、適当な方向に避けた。その後、風の刃(カッター)は何処かの家の壁に当たった。
「やるな!」
「お互い様だ!!」
ただのピエロかと思ったけど、予想以上にできるな。
やがて、風が吹いて水蒸気をみんな吹き飛ばしてしまった。
「蒼い雷(ブルー・サンダー)!!」
蒼い雷(ブルー・サンダー)……直接、相手の肉体にダメージを与える技でなく、相手の精神にダメージを与える技である。相手を捕虜としたい時には一番適切な技である。雷と言っても空から落ちてくるわけじゃなく、手から放たれる術で、どうしてこの名前なのかが未だ持って謎である。
「はっ!!」
女は当たる寸前にティアの攻撃を全て避けた。
「やるわね!変な格好だけど!!」
「うるさい!!今度はこっちの番よ!!」
女はレイピアを構えて、一気にティアの懐に入ろうとした。
ティアも一応『黒の支配者(エンペラー・ブラック)』の称号を与えられている魔道士。それなりの対策を落ち着いて取るぐらいのことは出来た。
「風の爆弾(エアロ・ボム)!!」
パァン!!!!!
大きな音と共に女はティアから少し離れた所へ飛ばされた。
今の術、実戦で相手にダメージを与えることはほとんどない。ただ、さすがに風の衝撃を受けて相手を自分から離れた場所に飛ばすことが出来る。練習すれば誰でも出来る術なのだ。
「ちっ……!」
「ふう…………」
正直、ティアならあの程度の相手を倒すことは簡単なのだ。街中と言う条件さえなければ。
街中で戦っていると言うことは、大技は一切使えない。
一方、あの女の方は剣術を得意としているため、街中でも一切関係ない。まあ、ほっておいてもティアなら何とかするだろうけど。
「ふーん……変わった術ね………」
「まあね。何なら、もう一発受けてみる?」
既にこの時点で、ティアは相手の女よりもずっと余裕があった。どちらが優勢に立っているかは一目瞭然だった。
「それじゃあ………こんなのはどうかしら?」
女はティアに向かって、ボールみたいなのを投げた。
ピカッ!!!!!!
それは突如眩いばかりの光を放った。
「キャッ!」
「もらった!!!!」
女はティアが光で目がやられたものと信じて一気に突っ込んでいった。
「何!?」
「誰をお捜しなの?」
女はそこから微動だにすることが出来なかった。首筋に突きつけられたナイフの冷たい感触がそうさせていた。
「ど……どうやってあれを?」
「別に防ぐ方法なんていくらでもあるわ。あなたがそれを見逃しただけ」
「くっ…………!」
「形勢逆転ね」
「それはどうかしら?」
「!」
「蒼い雷(ブルー・サンダー)!!」
女が放った蒼い雷は的確に自分の真後ろにいるティアに向かって放たれた。
ティアはなんとか上体をねじってそれをかわして少し離れた位置に行った。
「魔術が使えたのね」
「使えないと言った覚えはないけど?」
「確かに………」