「ど、どうしたんだ!?この怪我!!」
「わ…悪い…。やられちまった……」
「誰にだ!?何処のどいつだ!!」
「お…お前はこのまま町を出ろ…」
ジェスファは息も絶え絶えに喋った。
「何を馬鹿なことを!相棒をここまでコケにされて黙っていられるか!!」
「あいつは……化け物だ。手を出すな…このまま町を出ろ…」
「相棒!!」
「なあ、相棒。人の執念って凄いよな。最期にお前に一目会いたいと思っていたら何とかここまで来ることが出来た」
「おい……何言ってるんだよ……」
「本当に……最期にお前に会えてよかった……」
ジェスファはその一言を最後にその生涯を終えた。一人で生きてきた俺に初めて出来た仲間は……俺の腕の中で息を引き取った。
翌日、俺はジェスファの遺体を町外れの小高い丘に埋葬した。ここからだと、町の景色が一望でき、そして……ここが俺とジェスファとの最初の出会いの場所だった。
俺は町を出ることが出来なかった。相棒を亡くした俺は抜け殻のように毎日を過ごした。
二人でよく行ったあの酒場にも、もう足を運ぶことはなくなった。
相棒が出来たときの嬉しさとそれを失ってしまう哀しさが等価値であることをその時初めて知った。
それでも、時間は刻々と流れていき、町の状況も変わっていった。キラードールは賞金稼ぎだけではなく、懸賞金のかかっている犯罪者達までその標的に加え、次々と殺して血祭りにあげていった。
「おい、待てよ」
買い物帰りの俺に数人の男が声をかけてきた。今のこの町ででかい顔して表を歩いているのはキラードールのメンバーだけなので、すぐに俺にもそいつらがキラードールのメンバーだとわかった。
「お前…レイトだろ?」
「……だとしたら、どうだと言うんだ?」
「お前にはうちの仲間が殺られているからな。敵討ちってわけだ」
「………好きにしろ」
今更、長生きしたいなどとも思っていない。死を受け入れる覚悟はとっくの昔に出来ている。今の今まで生き延びたのはそのきっかけがなかっただけのことだ。
「ふん……こんな意気地なしに仲間が殺られたなんて信じられねえな」
「ああ。これならあの大男のほうがまだましだぜ」
大男!?
「お前達……その大男ってまさか…!」
すると、男達は卑屈な笑みを浮かべて
「そうさ。お前の相棒のあの大男さ。御頭と一戦やりあったのさ。まあ、あの図体が血まみれになっていくのは見ていてすっとしたぜ」
「まあ、すんでの所で逃げられちまったがあれだけの重傷だ。もう生きちゃいないだろうがな」
そうか……ジェスファはバルシェイドに殺られたのか……。
「まあいい。とりあえず仲間の敵は……」
その男の言葉はそこから先は続かなかった。何故なら、男の左胸の心臓に俺のナイフが突き刺さって、その場で絶命したからだ。
「き…貴様!?」
抜け殻同然の俺がいきなり攻撃したので、死んだ奴の仲間は動揺を隠せなかった。
「それはいいことを聞かせてもらった。お前達……悪いが死んでやるわけにはいかなくなった」
「ふざけんなぁ!!!」
男達は怒り来るって俺に襲い掛かってきた。
だが、所詮は使い走りの小物。俺の相手になるほど強いわけでもなかった。
「う…ああ……」
俺は襲い来る男達を次々と殺し、最後の一人だけは痛めつけるだけにして生かした。
「どうしてお前を生かしたかわかるか?」
俺は、自分でも怖くなるくらい冷静な声で言った。俺自身、自分に恐怖するぐらいだから、痛めつけられた男は死を望むくらいの恐怖を感じているだろう。
「バルシェイドのところへ案内させるためだ」
男は声も出ないくらいに怯え、体が震えていた。
「わかっていると思うが、いい加減なことを教えたら、お前もこいつらと同じ末路を辿ることになる」
男は言葉の代わりに、何度も首を上下させることで俺の言葉に対しての返事をした。
「よし……。だったら、案内しろ。今すぐにだ!」
俺は男の背中から心臓のある位置にナイフを突きつけ、男を無理やり歩かせた。変な行動に出たらすぐに殺すつもりだが、ちゃんと案内したらとりあえず約束どおり生かしてやることにしている。もっとも、この男は恐怖でとりあえず死ぬことから逃れることしか考えていないだろう。
男は時折、背中に突きつけられているナイフを横目で見ながら、俺の言うとおりキラードールがたむろしている酒場の前まで来た。店先に何人か見張りがいたのですぐにこの男が案内して来た場所が嘘ではないことがわかった。
「ごくろうだったな」
後ろから一撃を加えて男はその場に倒れた。約束どおり生かしてあるが、この程度のことは殺されるのに比べればマシと言うものだろう。
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