■ Episode7: EXILE〜失われた記憶〜 ■
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ばっく
ねくすと
*
【・・?・・ここは一体・・】
目が覚めればまた違う。
だが、今度は綺麗なベッドの上だ。
天井にはとても綺麗なアートが施してあり、いい香りが漂う部屋の中、もう一度、眠りたくなってしまう。
でも、またどこか遠くへ行ってしまうのが、怖くて、ベッドから起き上がった。
軽く世界が暗んだ。
脳ミソは大分お疲れのようだ。
ガチャッ
綺麗な扉が開いた。
「!・・おはよう。目が覚めたのね。・・よかった。」
綺麗な女性が微笑み言った。
俺は状況がよめない。
「・・ここは?」
俺は疑問しか吐けない。
「私の部屋よ。」
脳を整理したい。
眉間に皺がよる。
「・・俺は何でここに居る?」
「噴水の前で倒れたのよ。だから、ここへ連れてきたの。あそこで何を?」
「・・俺に質問しないでくれ。」
「・・・・困惑しているのね。・・何が知りたい?」
「この世界のことを教えてくれないか。・・俺には記憶がない・・何もわからない。」
「いいわ。・・・この世界は今、私が知ってる限りでビースト、星、人間と、大きく分けてこの三種族が暮らしてる。
その中で一番恐ろしく、一番の権力を持つビースト。
彼らの中にもあらゆる種族が存在するらしいけど、皆共通しているのは殺戮をエサにして生きてるの。
それがビースト同士でもね・・。
ビーストはすべての脅威なの。
・・そして星とは、はるか昔、人間がビーストの脅威に怯え始めた頃に現れた
特別な力を持つ12人の救世主達に付けた名で、その力の根源は身体の中に秘められた石。
彼らのビースト退治が始まって、人々は救われていったの。
でも、ビーストは死なない。・・地涌の怪物。
時間をかけて何度でも蘇るわ。
そして、人々の希望が消える時がやってきた。
12人の救世主達の死によって・・・。
彼らの衰えてく最中、石の力を持つ最強のビーストが姿を現したの。
人々はその巨大さから巨魔神と名づけた。
今では巨神と語り継がれてるわ。
彼の誕生で勢いを増したビーストは今まで以上に活発になり、人口は半年で半数以上減った。
脅威は倍加した。でも、希望の光は産声をあげ、この世に生を受けた。
時は絶ち、星の時代へ・・
石の能力は優勢遺伝で親のどちらかが星であれば、生まれてくる子供は必ず石の能力が備わった。
星はその数を増やしていき、ビーストは次第にその数を減らしていった。
でも、ビーストには〔巨魔神〕がいる。
[巨魔神がいるかぎり平和はない。]と考えた星達は、打倒〔巨魔神〕を胸に、軍を起てた。
でも、単体が何人もいたところで彼の石には傷一つ付けることは出来ないと
考えた将軍(私の祖父)は発明家に星騎士全員にある指輪を造らせたの。
それをはめることによって石の力が団結し、指輪の所有者達の間を自由に駆け巡ることができた。
その結果、見事〔巨魔神〕の石を砕くことができた。
でも、予想は大ハズレ、巨魔神の力は弱まることはなく、長い戦いの末・・
星騎士軍は敗北したわ。そして、巨魔神も眠りに就いたの。
両者、傷を癒すために静かな時が流れ・・
そして、今に至った。
もうすでにビーストは動きだしている。
なのに・・・星はカサブタを剥がし続けている。
治った傷を舐めあっている。
怯えている。
誰も戦おうとしない・・・」
彼女は悲しそうだった。
「人間には何もできないのか?」
「・・彼らの残した文明、存在は滅びの糸を確実に辿っているわ。
・・星にも同じことが言える。このままじゃね。
あの廃墟の街もつい最近まで栄えてた人間の時代からのものだったのよ。
観光地としても有名だったのに・・・。私も好きだったな〜。・・友達もいっぱいいたのに・・・」
彼女はより一層悲しそうな表情を見せた。
涙を堪えている。
「・・・・・」
【俺には何も出来ないのだろうか・・】
「あなた、名前は?私は風。」
「・・・俺には名前など・・」
【・・・思い出せない・・・過去が知りたい・・・】
「好きな名前を付ければいいじゃない。過去に捕らわれないで。」
彼女のこの言葉に俺は何かが吹っ切れた。
そんな気がした。
「じゃあ、・・・皆無。」
「皆無?ネガティブな名前ね。」
「ネガティブじゃないさ。ポジティブだよ。無から始まるんだ。誰だって。」
彼女は口を手で覆い笑った。
それに吊られて俺も笑った。
二人は思った。
【久しぶりに笑ったな。】
「ねぇ。」
「ん?」
「私の目を見て。」
「?どっちのさ?」
「どっちでも。」
俺はドキッとしつつ右目を覗いてみた。
「・・・・綺麗・・・・」
そんな言葉が思わずでた。
「エメラルドよ。」
「!!?」
エメラルドに驚いたんじゃない。
彼女の唇が俺の唇に触れたことに驚いたんだ。
愛しい瞳で俺に問い掛ける。
「皆無の石は何処に?」
「さあ?あるのかな・・俺はただの人だよ。」
「きっとあるよ。隠れて見えないだけ・・・私が見つけ出してあげる。・・」
そう言うと、俺の上着のボタンに手をかけた・・・
by nanty