件名:XXX
依頼内容:猫探し。
依頼人:宝生 朱音(ほうしょう あかね)
メンバー:宇佐美香奈・水咲綺羅・森あさみ・真白雪兎・真笠巳翔茶・大堂寺空良
集合場所:ダイアゴン横丁横の公園噴水前。

以上、上記のものは今から30分後に上記の場所に集合せよ。
なお、このメールは目を通した後削除する事。


Secret Clover
〜依頼1、消えた猫を追え②〜



*ダイアゴン横丁横の公園噴水前*

集合時間、2分過ぎ。
あさみが集合場所に来てみるとすでに他のメンバーは揃っていた。

「あさみ先輩。遅いで〜!」
「ごめんごめん。ちょっと、私用で逆方向にいてさ。」

急いで走ってくるあさみに翔茶は、怒ったように頬を膨らませる。
そんな後輩の頭を謝罪しながら軽く撫ぜた後、隣にいた香奈を見る。

「で、結局は今回って本当にただの猫探しってわけ?」
「そ、依頼人はメールでも書いてあったけど宝生朱音。17歳。元十二支高校生。」
「?元なのか?じゃ、今は違うのかよ?」

SCには、時にこのような個人的な以来が入ってくるがそのほとんどは現役の学生。
元十二支生という依頼人に意外そうな顔をする綺羅に香奈は、携帯に後から送られてきた細かいデータに目を通す。

「あ〜、1年の9月に家庭の事情で中退。今はダイアゴン横丁にあるパン屋の看板娘だってさ。」
「あ、そこのパン屋知ってるv美味しいんだよねv」
「そーそー!この間行ったらおまけしてくれたんやで。」

ダイアゴン横丁にあるパン屋は、安くて美味しい学生の味方。(笑)
どうやら依頼人について知っていたらしい空良と翔茶がわいわいと騒ぐ。
思いっきり脱線して、今にも一番美味しいパンを語りだしそうな二人にあさみがストップをかける。

「今関係ないって…でも、猫探しなんて迷い猫か何かなわけ?」

さっきも言ったが、SCには稀にこのような学園以外の個人的以来が入ってくる。
少しでも実践を取り入れようという学園側の意向なのだが、さすがに猫探しのような仕事はさすがに請けたことはない。
不思議そうに首を傾げるあさみに香奈は軽く首を振った。

「違う。何でもその猫が依頼人の髪飾りを飲み込んだらしいわ。…依頼人の父親の形見の。」

父親の形見…その言葉に他のメンバーは一瞬言葉を失った。
なぜ、学園がこの依頼を受けたのかなんとなくわかったからだ。

「……で、その猫の特徴ってないのかよ?」

しばらくそのまま立ち尽くした後。
静かになった面々の中で最初に動いたのは綺羅だった。

「ちゃんとあるわよ。チャトラで、耳に少し切れ目があって目が片方黄色でもう片方は瞑ったまんまの小さめの猫だですって。」
「?片目は瞑ったまんまなん?」
「生まれつき眼球のない猫なんだってさ。ここら辺じゃ、結構知られた猫らしいわよ。」
「…まぁ、それだけ特徴があれば目立つでしょうね。」
「でも、その分だけ見付けやすいよね。」

耳に切れ目・片目が黄色で隻眼・チャトラ。
随分特徴的な猫の外見に一度溜息を付いた後、香奈は隣にいた雪兎を見る。

「まぁね、それに今回はメンバーに雪兎いるしね。」
「「「あ〜、確かにね〜」」」

雪兎の特技は、近くの動物を呼び寄せる事。
たぶんダイアゴン横丁内なら範疇に入るだろうと他のメンバーも納得した。

「じゃ、早速ここらにいる猫呼んでもらえるかしら?」
「あ、はい。分かりました。」

香奈の言葉に頷いて、雪兎は首から下げていた笛を吹いた。
自分たちには聞こえない音があたりに響いたのだろう後、公園に向かって猫が集まってきた。

「相変わらずすっごい特技ねぇ。ちょっと感心?」(香奈)
「猫が一匹、猫が二匹、猫が三匹……」(翔茶)
「翔茶ちゃん。数えないでねぇ…頭痛くなるから…(汗)」(あさみ)
「猫の楽園…み、ミステリ〜vvv」(空良)
「ミステリーかこれ?」(綺羅)

猫猫猫…
ぞろぞろと集まってくるダイアゴン横丁に住む猫たち。
飼い猫、野良猫関係なく、最後の一匹が来たのを確かめると雪兎は一番体の大きな猫に近く。

「ちょっと、聞きたことあるんですけどいいですか?」
『ニャ〜。』

どうやらこの猫がここらへん一帯のボスらしい。
目線が合うようにしゃがみ話しかける真白に猫も答えるように鳴く。
そして、その間に他のメンバーはこの中に例の猫がいないか探し始める。

「う〜ん…どうやら、この中に探してる猫はいないらしいですね。」
「似てる子はいるけど…今は近くにいないのかな?」

しかし、猫の団体の中にはそれらしい猫はおらず。
どうやら今現在は、この辺りにはいなかったようだ。

「でも、依頼人の話では近所でよく見かける猫なんでしょ?」
「そうよ。なんでもここらへんの家を数件に渡って歩き回ってるらしいわ。」
「じゃ、結構行動範囲が広いんじゃねぇ?」
「大丈夫。そこの裏の団地周辺らしいから。」
「それなら、ここらへん一帯を捜索すればいいってことなんか?」

翔茶の言葉に異議がないというように頷くメンバー。
捜索をダイアゴン横丁に絞る事に決定した時にボス猫と話していた雪兎が戻ってきた。

「あっ、終わったの?」
「うん…終わりはしたんですけど…」

終わった割には、浮かない表情。
正面にいたあさみが不思議そうに首を傾げる。

「?猫の居場所分かったんでしょ?なのになんでそんなに暗いの?」
「…居場所は…ダイアゴン横丁内にはいないことは確かなんですけど…」
「通い猫だったんやろ?だったら、今はどこかの家にいるんか?」
「いえ…そういう訳でもなくて…」

みんなに聞かれ、もごもごと言葉を濁す雪兎。
しかし、いつまでもそうしていられるわけがなく意を決して小さく呟いた。

「……猫…連れてかれちゃったって…。」
「「…はい?」」

思いもよらぬ言葉に一瞬固まるメンバー。
そんなみんなに雪兎はごまかすように笑いながらさらに爆弾を落とした。

「知らない男の子が来て連れてっちゃったって…」
「「「「えー!!!」」」」

猫探しは、難航の予感。



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*アトガキ*
はい、猫探しの2話目です。
まだキャラたちも出てきませんが…これからきっと!
…とりあえず、頑張って書きます。

2004/04/02