少女には 過去も未来も無くて 在るのは 現在だけ — 守るもの 守られるもの — Ⅰ 協力者 「タク早く来いよー!」 「ちょっと待てよ誠二!」 とある日曜日のAM9時。 少し大きなスポーツバックを持った二人の少年が歩いている。…否走っている。 1人は目の下に無きボクロのある少年。もう1人は猫目の少年。 黒須学園二年の、藤代誠二と笠井竹巳だ。 「早くしねーとキャプテンに怒られるだろー?!」 「……ソレ…俺の台詞なんだけど……。」 ——寝坊したのお前何だからな?! と藤代に睨みを利かせる。 「だって目覚まし鳴らなかったから…!」 「いーや鳴ってた!そしたらお前が叩き壊したんだろ?!」 「あ、だから何か色々落ちてたんだ!」 「……もう良い。」 大きな溜息を吐く。 それより早く学校に行かなくては。と歩くスピードが上がる。 今日は日曜日だが、部活は在る。なんせサッカー部員……運動系統の部活なのだから。 「た…タク?竹巳君?おこ…って…る?」 「……怒ってない。」 「怒ってる!絶対怒ってる!」 「……何でお前がムキになるんだよ…。」 端から見ればツッコミとボケのこの二人。 そろそろ本当に時間が——— 笠井がそう思って路地の傍の、人通りの無い小さな公園の時計に目をやった時だった。 「っう……。」 誰かの声がした。 笠井自身耳が悪い訳ではないし、ハッキリ聞こえたのだから、空耳だとは思わなかった。 「誠二、今なんか聞こえなかった?」 「あ、タクも?俺もなんか人の声…みたいなのが……!」 突然、藤代の瞳が大きく見開かれた。 指は一点を指していて、その先には、自分達より少し年上だろう少年が、血だらけで倒れている。 傍に在る土は、少し血で染まっていた。 「……セージ!病院と西園寺監督に電話して!俺の貸すから!」 「え?でも…!」 「早く!」 ポイッと笠井が藤代に携帯を投げた。 投げた笠井も上手かったのだろうが、藤代は胸の辺りで携帯を掴んだ。 「……分かった!」 「良し!……取り合えず止血しないとな。」 笠井は鞄から着替えのTシャツを取り出すと、一番出血の酷い腕をぐっと縛った。 一瞬にして白かったTシャツが赤に染まる。 「…痛ッ…!」 「…ちょっと我慢して下さい。」 「竹巳!救急車すぐ来るって!西園寺監督には遅れるって言っといた!」 「分かった。誠二、悪いけど替えのTシャツ貸して。思ったより出血が酷い。俺のだけじゃ足りそうに無いから。」 「げ、そんなに酷いの?」 「……あぁ。俺達素人に何かできる様なモンじゃない。」 ゴクリと藤代が喉を鳴らした後、鞄をガサゴソと探った。 中にはスナック菓子やらゲームやら入っている。藤代はその中から真新しい一枚の白いシャツを取り出した。 「Tシャツ…今日一枚しかないけど、」 「ソレで良い。もう直救急車来るだろうし。」 「うん…あ、タク。西園寺監督から伝言。」 「何?」 「『危ない事には絶対顔を突っ込むな』」 ウィィィィィ……… 遠くからサイレンの音が近づく。赤いランプも少し見える。 「……もう突っ込んじゃってるんだけど。」 「へ?それって…?」 ガタン 白くて少し大きな車が公園の入り口に止まる。 中から白衣の人間が数人担架を持って走ってくる。 「だってこの傷って多分……『 』だ。」 「付添い人の方々ですか?」 え?と藤代が聞き返そうとした時、先程の白衣の人間の1人が慌てて走ってきた。 後ろに在る救急車では、倒れていた少年が運び込まれている。 「はい。」 「え?ちょ…タク?!さっき何て、」 救急車に乗り込もうとする笠井を藤代が引き止めた。 笠井も言いたい事があった様で、ニッコリ笑って口を開いた。 「セージ、西園寺監督に伝言。」 「伝言…?」 「うん、『俺、危険な事に、もう首突っ込んじゃいました』って言っといてよ。」 「………分かった。」 「ん。じゃ、なるべく早く頼むな。」 「………おう。」 車が見えなくなって、音も聞こえ無くなった公園には、 藤代がポツンと立っていた。 「タクのバーカ。本当は聞えてたんだぞー」 『だってこの傷って多分、撃たれて出来た物だ。』 「早く、西園寺監督呼びに行かねーとな。」 '協力者’。 ソレは、誰にだって、何時かは現れる。 誰にだって、一人は居るはず。 Back. or Next. ———————————— 後書き? ・横山一騎(ヨコヤマ イッキ) 17歳の横山平馬のイトコ。 性格は平馬に三上等を足して2で割った感じ。 ・世野 樹与(セノ キヨ) 17歳の一騎と巴のクラスメート転入生。 一人称は私の大金持ち科学者。 ・萩原 巴(ハギハラ トモエ) 17歳、一騎達のクラスメートで一騎の親友。 *コメント* オリキャラさんたちの設定が判明です。 横山君と三上君を足して割った性格…いい性格です。一騎君。(笑) そして、なんと言っても笠井君がかっこいいです! 藤代君との友情がとっても男の子してます。