大切な親友。
失いたくない。
俺のたった一人の親友。


— 守るもの 守られるもの — Ⅰ 突発


「畜生ッ…!畜生畜生!」

夜の港を、1人の青年…否、少年が走っていた。
手や足からは、少量だが血が滴り落ちている。
目からは大粒の涙。

「ち…くしょう…!」

——友達1人助けられないってのか?
少年の頭の中では、ずっとこの言葉が廻っていた。

「あー……俺最悪じゃん…。」

ぐっと夜空に手を伸ばして、
星を掴もうとするが、掴めるわけが無い。

「ホント……最悪……。」


————事の始まりは、数時間前の兼所

「如何言う事だよ…コレ…。」

少年、横山 一騎は、とある研究所内の一室で、一枚の紙を見て瞳を大きくしていた。
紙は何かの設計図。

「アイツが…?アイツがロボットだって…?」

その設計図には、
主にロボットを作る時の手順で、1人の少年が描かれていた。

「…あらら。見ちゃったんですね。だから大人しく座って待ってて下さいと言ったのに…。」
「……コレは如何いうつもりだ世野。」
「?そのままですけど?」

一騎の後ろには、世野と呼ばれた青年。
白衣を着ていて、片手には黒光りしている拳銃。
足元にはコーヒーの入ったカップが二つ置いてある。

「……うわ。それで撃とうっての?」
「だって見ちゃったでしょう?……巴君がロボットだって証拠。」
「……嘘だろ?ソレ。」
「嘘じゃありませんよ?」
「科学技術って其処まで進んでたか?」
「いーえ。私だから出来るんですよ。」

——貴方だって分かっているでしょう?
そう呟いて、世野は引き金を二回引いた。
一発目は一騎の頬を掠っただけ。
でも、二発目は、右腕を貫いた———。

「ッ…!」
二つの痛みに顔を歪ませながら、一騎は何とか思考を働かせた。
コイツ…腐ってやがる…。
頬と腕の血を拭いながらキッと世野を睨んだ。
撃って何とも思っていないのか、笑っていた。

「……俺も最悪だけどお前も最悪。」
「最悪ですか。まぁ別にいいですけどね。」
「……やっぱお前俺より最悪。」
「相変わらず毒舌ですねぇ。」
「そりゃどーも。」
「サヨナラ…の前に会わせてあげましょうか。」
「あわ…せる?」
「えぇ。」

——まさか…。 嫌な予感がする。
キィ…と扉の軋む音と共に、1人少年が、顔を真っ青にして現れた。
—萩原 巴。ソレが少年の名。
一騎と一緒に、世野の家に遊びに来ていた、一騎の親友———

「とも、え?」
「…いっ…き…おれ…ロボ…ッ…ト…?」
「ロボットですよ?」

—違う!お前はロボットなんかじゃない!
そう言おうとした一騎を遮り、世野が言った。

「だって、ご家族いないでしょう?」
「……と…さん…たち…は…おれ…が…小さい頃…し…んだ…んだ…。」
「ソレは私の作ったキオクです。」

やめろ。やめろやめろやめろ。
それ以上巴に何も言うな!
そう言いたいのに、口が動かない、頭が働かない。
手足が動かない。

「さて、もう良いですよね、お別れ、」
「……え…?」

巴は声を上げたと同時に、床に倒れこんだ。

「巴!」
「大丈夫ですって。電源切っただけですから。」

電源切っただけ。
その言葉は妙に頭に響いた。
ゆっくりと前を向くと、世野が拳銃をまたコッチに向けていて、
後ろに下がろうとするが、後ろは机。もう下がれない。
そんな時、平の手に冷たい物が当った。
——剣、?
日本刀等の刀ではなく、外国製の剣。
もしかしたら、アイツの拳銃から、アイツも俺も傷付かずに、逃れることも可能かもしれない。
失敗したら俺はお陀仏。そんな賭けだが、やってみる価値は在りそうだ。

「あぁ。そうみたいだな。」
「?やけに諦め早いですねぇ?まぁ彼方は気紛れですからね。」

——それでは、また何時かお会いしましょう。
銃口が一騎の額にに向けられる。
向けられている一騎は、ふ、と笑うと、世野に向かって——— 突っ込んだ。

「っうらぁ!」
「な?!」

剣をぎゅっと掴み、大きく振上げた。
剣は世野の横の宙を切って、カランと音を立て床に落ちた。

「俺まだ死ねねーんだ。…巴を助け出すまではな。そんで、お前をぶん殴る!」



一騎の居なくなったその空間で、
世野は不適に笑みを浮かべ、足元の剣を拾った。

「本当莫迦ですねェ。私から逃げられるとでも思ってるんでしょうか。」


「お楽しみはコレからですよ。一騎君———。…巴君。」


それは、
神様が決めた宿命。——運命なんだ。
だったら、変える事だって
絶対できる。


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後書き
またまた投稿させて頂きました(汗
きゃ…キャラが出てきません;
しかも何だか初っ端からシリアスっぽくてスイマセン;


コメント
水無月さんより頂きました。
サスペンスでミステリーですよ!(謎)
一騎君と巴君がこれからどうなるのかわくわくです。