守りたかった
自分を信じてくれた
たった一人の 友人


— 守るもの 守られるもの — Ⅱ 依頼


『お前どっか行けよ。気持ち悪い。』

何度その言葉を言われた事か。
クラス中から嫌われて、何時も1人で、
それでも苦しいとか辛いとか思わなかった。
思ったって、別に如何かなる分けじゃない。

例えば、俺が其処で、「もう止めてくれ」と言っていたとしたら?「辛いんだ」とでも言っていたら?
如何にかなったか?いいや如何にもならない。
逆に奴等を喜ばせるだけ。まったく意味が無い。

「お前等最悪。」

でも、そんな中、唯一俺を庇った奴が居た。
クラス中の人気者で、男女問わず人気がある。
だから声をかけられた時、心底驚いた。

「ほら!行くぞ!」

そう言って掴まれた手は、ほんの少し温かかった。
それが、俺と、萩原 巴の出会いだった。

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「んぁ?」

ほんの少しの眩しさに、横山一騎は目を薄っすらと開けた。
その眩しさの元凶は、人工的な光。
顔を少し傾けて横を向くと、美人と言うべきであろう顔の女性が、二人立っていた。
後ろの方では少年少女等がゲームをしたり、こっちを見たりしている。
誰だろうと思いながら、右手と左足を動かそうとした。……動かない?
何時も自由なその手足には、包帯が巻きつけてあった。
幸い、利き手である左手と右足は無事のようだ。

「横山…一騎君よね?」
「……そーっすけど?」

女性の内1人が一騎に近づいて来た。
もう1人はこっちを見て笑っている。
正直言って、一騎はもう1人の女性が好みだ。と言おうとしたのをぐっと堪えた。
こう言う性格なのはご愛嬌。やはり自分の中にある血のせいだろう。

「萩原 巴君の事よ。」
「……誰だよアンタ等。」

そう言えば、世野の事もこうやって睨んだ気がする。そう思いながら、一騎は女性をキッと睨んだ。
女性は、「あら別に敵とかじゃないわよ?」と肩を竦める。
後ろのもう一人の女性は笑いを必死に堪えている。

「探偵、よ。」
「たんてー?」
「正確には後ろに居るあの子達が、だけどね。」

探偵。ソレだけで十分驚いたのに、
後ろの子供達が探偵だと言われたのだから、一騎は一瞬、自分の気が遠退いた気がした。
でも顔には出さない。それもやっぱり自分の血が関係しているだろう。元々そう言う家系だから。
自分のイトコだって無表情だ。自分と同じで、注射をしたら血が止まらなくなって貧血になるし、
意味も無く語尾を「だよなー」「えー俺ー?」と伸ばす。

「それで、萩原君の事なんだけどね……彼…ロボットって言うのは本当なのかしら?」
「何でアンタが知ってるんだよ…。巴の事…、」
「あの子達が調べたの。彼方が気絶している間にね。
 そう言えば彼方、拳銃で撃たれたんですって?笠井君と藤代君……あそこの男の子二人ね。二人が救急車呼んでくれたのよ?」

女性が指差すところを向くと、一騎より少し年下位の男子が二人。
あぁ、じゃああの時俺を助けてくれたのはアイツ等か?と、自分が公園で倒れていた時の事を思いだす。
気が虚ろだったから、覚えているのは誰かが声を掛けてくれていたと言うことだけだが。
じっーと見ていた一騎の視線に気が付いたのか、猫目の少年笠井竹巳が傍にやって来た。

「良かった!気が付いたんですね!傷、大丈夫ですか?」
「ん。あぁ、俺が倒れてた時……止血してくれたの…お前か?」
「はい。俺、笠井竹巳です。横山一騎さん。あの、もし良かったら、依頼してみませんか?」
「竹巳、な………って依頼?」
「はい!」

——依頼!してみましょう!小さな探偵さんたちに!
笠井は、後ろの方でじゃれ合っている少女達を指差していった。
ニコッと効果音の付きそうな笑顔で言われたのだから、断るわけにはいかない。断れない。
一騎は小さく溜息を吐いた。

「………依頼ってどんな事でも良いのか?」
「ん?もちろんやで兄さん!普段は学園の依頼ばっかやけど、個人的なのもうちの理事長は大歓迎やー!」」
「……翔茶。何処から出てくるのお前、」

竹巳と女性の間から、ひょこっと小さいのが一人顔を覗かせた。
小等部六年真笠巳 翔茶と中等部一年黄色 雛だ。

「えぇやんか何処からでも。…で、依頼は本当何でもえぇよー!」
「そーそー!解決するのはあたし達だから!」
「でも貴方達に依頼を通すのは学園側よ?」
「えぇやん理事長!んで!依頼するんか?するんやったら、コレ書いてな。一応。」

ずいっと目の前に出されたのは、
ボールペンと、一枚の紙。紙には『Secret Clover 依頼書』と書いてある。
見るからに手書きだ。その紙を見て、理事長と呼ばれた女性が、
「そんなの作った覚えないんだけど、翔茶君?雛ちゃん?」とドス黒いオーラを身に纏っている。

「…どんな事でも良いんだろ?じゃあ…依頼…する。」

紙を見ながら呟く。
ボールペンを持って、一番最初の名前の欄を書くと、ぴたりと手を止めた。
——この紙を書けば、アイツは助かる?巴は助かる?世野を、元に戻せるのか——?

「大丈夫ですよ。」
「竹巳、」
「この人達は彼方の味方ですよ?きっと助けてくれますから——。」

だから大丈夫ですから。
と笠井は一騎の肩に手を乗せた。

「………そう……だな。」

文字で埋まったこの紙一枚。
紙一枚だけど、アイツを助けられる。俺は信じてる。


— 依頼内容 —

依頼人…横山 一騎
依頼内容…萩原巴の奪還



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コメント
理事長登場…遊ばれてます。(笑)
そして、遂にSCに巴君奪還の依頼が来ました。
どうやって奪還するのか…続きが楽しみです。