あなたと過ごすクリスマス
12月24日。クリスマスイブ。
キリスト教徒でもない人々が、恋人同士や家族で迎えたいと願う特別な日。
灰原哀にとっても、今年のクリスマスは少しばかり特別かもしれなかった。
なぜなら・・・。
「こんなもので、いいかしら・・・」
誰とも無くつぶやいて、哀は大きな姿身の前で何度も自分の姿を確かめる。
普段、あまり使うことの無いこの大きな鏡。今日は、いつもかけてある布を
取り除き、さっきからずっと繰り返し覗き込む。
黒の、シンプルなワンピース。ほんの少し光沢が混ざっている。生地は、上
等のベルベット素材。・・・博士が、奮発して買ってくれたもの。
哀の真っ白な手首と、すんなりと伸びた足に良く似合う。
くるっと一回転すると、スカートの裾が軽く広がる。そんな動作をしている
自分を、鏡で改めて見つめて、少し頬を赤く染める哀。
・・・はしゃいでるわね、私・・・。
我ながら、うきうきした気分を隠し切れないらしい。
いいわよね・・・だって、今日は特別な日だもの。
出かけようとしてもう一度鏡を覗き込んだ哀は、ふと胸元に手をやる。
大人っぽい、胸元が開いたデザイン。
それは、哀にとても良く似合っていたが、少しばかり寂しいような気もした。
何かつけようかしら・・・。
哀は、宝石箱を探ってみる。
そう、これにしよう。相手に合わせて・・・。