沈黙を破るため隆次が聞く。
「ジミーさん、と呼べばいいんですか?」
ジミー・フォードと和美、隆次はジミーの運転する車、アルファ・ロメオの中にいる。
夜のエジンバラを後に、車は一路グラスゴー郊外の空港へと高速道路を突っ走る。
「ジミーでいいよ、隆次君。しかし危ないところだったね。奴らはもう君達の命をねらっているようだ。これからも油断は出来ない」
「じゃあジミー、俺はあなたのことを信じるよ、命の恩人だし何よりもう頼る人もいないし・・・」
「私ジミーさんのこと知ってるわ。しっかり思い出せないけれど、その優しいさの漂う表情は心のどこかに、どこかの部屋にしまってあるわ。でもどこでなのか、いつなのか思い出せない」
「カズミ、ユタの農園で隆次君としばらくゆっくり過ごすことだ。グラスゴーからロンドン経由でアメリカに向う。セキュウリティの行き届いている空港といえど油断は出来ないが、ここにいるより遥かに安心だ」
「悟君は、私の記憶にある悟君は全て幻想だったの?ジミーさん?」
「君達をこのロドリー研究所のあるイギリスに、日本よりもπの研究所のあるここに無傷で連れてくるために仕組んだことだろう。彼は今の君の状態をしっかり、近くで見ておく必要があたんだろう、きっと。悟が何を考えているのか、目的は何かということは今の段階でははっきり言えない」
「ジミー、俺って悟にとってはお邪魔虫だったんだ。勝手に付いてきてる」
「いや、君は全くの第三者だがこれが運命って奴だろう。はっはっは。君がいなかったら今ごろカズミは悟の手に落ちているよ。そういう意味で君には感謝する。そしてこれからもカズミのことを宜しく頼むよ」
「ジミーさんに言われなくてもそのつもりですよ。俺は和美を守る!」
「カズミ、素敵なボーイフレンドだね」
「ほんと、私にはもったいないくらいに。喧嘩もよくするけどね」クスッと笑う。
「アメリカか、親父やオカンが心配してるだろうな、いったい何処いってんだいって感じで」
「隆次君から手紙や連絡を取るのはよくないが、私が日本の友人経由で家族当ての手紙を預かろう。間違えなく届けるよ」
「そんなことまでしてくれるんだ、じゃあお願いするよ、ジミーさん」
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