スチュアート教授から「今日はもう帰ってくれないか」と言われ、しぶしぶエジンバラ大学を後にした和美と隆次は街へ出ることにした。エジンバラの昔ながらの石畳の道を歩きながら二人は話す。
「もうイギリスに来て何日になるんだっけ、和美?」
「えーと、確か5日目、いや6日目ね。いろんなことがありすぎて・・・」
街を歩くエジンバラの人々の服装はみんなシックだ。そのシンプルさがブロンドの髪にブルーの瞳と実に良くあっている。あまり東洋人も黒人も見当たらない。
街の中を隆次と歩いていると何もかもから開放されたような、とても軽い気持ちになる。日本で二人デートしてた時の楽しい時間とダブる。
「そうか、もう1日で1週間になるのか。早いな」
「ねぇ隆、私ね、もう日本に帰りたい。とんでもないことが確実に起こってる。それも私を中心に。私はそんなことなんて望んでなんかないよ。わかるでしょ?」
「全てが片付くまでの辛抱だよ。そうでないとこれからもずっとこの謎を背負って生きていかなきゃいけない。そんなの嫌だろ?俺がいる。少なくても俺だけは信じろって」
「うん隆のことは信じてる。でも怖いの。私が悟君を殺したことや、他の記憶、そして悟君の遺体が病院から消えたってことも、どう考えても普通じゃない・・・」
「そうだな、普通じゃない。俺だって正直怖いよ。冗談ですませられないコトだらけだし、今まで生きてきた中で最もおかしな時間を過ごしてるって感じる。だけどその裏側では今、俺は生きてる!って思ってたりもするんだ。大学で学んでることなんてこの現実の前ではフィクッションだよ。実際何がなんだかわかんないんだけど」
「あとどれ位で日本に帰れるのかな」和美が言う
「そうだなぁ・・・ホントわかんないや(笑)」
「ふふ。ホント隆は根っからの楽観主義なんだから。でもそこが好きよ」
「イギリスに来て始めて笑ったな、和美。なんだかホットするよ」
軒先にランプの吊るしてあるレストランで二人は夕食を済ませた。久しぶりのゆっくりした時間。街はすっかり夜の冷気に包まれ、ヘッドライトを光らせた車が往来を行き交う。街のあちこちにある街灯、店の前のランプが夜の闇に優しさを添える。
ホテルまでの道を二人は歩いた。
市街、ある角を曲がると急に大きながっしりした男達が目の前に現れた。
「カズミにリュウジか?」
それを聞き終わるより早く隆次は和美の腕をとり走りだした。
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