僕らは冷たい流れに足をひたし、腰をおろした。トモミの横顔を視界の隅に捕らえながら、「このまま時が止まればいいのに」などと考えていた。
「あの夜は、ごめん」
そんな言葉が、ふと口をついて出た。ずっと気にしていた。どうしても謝りたかった。
そんな僕の言葉にトモミは、
「気にしないで」
とだけ答えた。その言葉が僕の胸を貫いた。
息が詰まるような気持ちだ。苦しくて、とてもせつない。涙が自然とあふれてくる。
あの夜、僕は思いを寄せる人を守れなかった。そして今、「気にしないで」…。僕はなんて格好悪い男なんだろう。
死んでおけば良かった。アキラやサトルと一緒に、街で終わらせるべきだった。世界を壊したのは僕だ。その責任も取れずに、僕は街を逃げ出してきた。なんてみじめなんだろう。死ぬべき時に死ねなかった人間ほど、哀れな生き物はない。どうして僕はいまだに生きているのだろう。なぜ生きたいと思ってしまったのだろう。
涙が止まらない。この一年が頭の中でよみがえる。
己の身の安全だけを考えてきた。目の前で誰かがさらわれても、隣で誰かが苦しんでいても、僕は自分のことしか頭になかった。愛するトモミすら守れなかった。そして、そのことを忘れようとした。
アキラはトモミのことを心配していた。だが、僕は何も話さなかった。怖かったから。
そしてトモミにも、アキラのことを語せずにいる。
一体、何なのだろう。僕は何を怖がっているんだろう。
みじめだ。力が抜けていく。もう、体を支えきれない。沢に両手を突き、僕は泣いていた。きっとトモミはそんな僕を見て、あきれているだろう。軽蔑するだろう。きっと、もう、言葉を交わすこともなくなるだろう。
思いが口を割る。街で見たこと、聞いたこと、僕がやってきたこと、感じたこと、考えたこと…。
とりとめもなく言葉が出てくる。喉が切り裂かれそうなほど、次々と言葉があふれてくる。
アキラ、アキラ…。
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