明日へ…第三部2

僕は山中を半月近くさまよっていた。小さな沢のほとりで気を失っているところを、村の人が見つけ、ここまで運んでくれたのだという。
トモミによると、僕は三日間ほど眠り続けていた。衰弱が激しく、皆、このまま死んでしまうのだろうと思ったという。そんな人は今まで数多くいたらしい。

体は順調に回復し、僕はようやく自力で歩き回れるようになった。さっそく、トモミの案内で、村を一回りした。
本当に何もない小さな村だ。周りを取り囲む山々の緑は、今にも村を飲み込んでしまいそうなほど、生い茂っている。
僕らはいつの間にか、沢のほとりに来ていた。澄んだきれいな水が、そよそよと流れている。緩やかな風が、トモミの髪をなでていった。
「アキラは…」
トモミが聞いた。その言葉に、僕は何と答えていいのか分からず、うつむいてしまった。
僕が握りしめていた肉片、あれがアキラだ…。
そんなこと、とても話せない。僕はうつむいたまま首を横に振った。

自分でもどういうつもりで首を振ったのか、よく分からない。トモミがそれをどう受け止めたのかも分からない。沈黙の中、山の緑がざわめく。
「きっと、どこかで生きてるよね」
トモミは、遠くの空を見ながら、か細くつぶやいた。
「うん、きっと」
僕は嘘をついたつもりはない。アキラは確かに僕の中で生きている。僕はそう信じている。

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