明日へ…第三部1

僕は山の中をさまよっていた。アキラの肉片もあと一切れしか残っていない。
疲れは極限に達していた。さきほどから激しい雨が降り出している。

ふと気が付くと、僕は小さな小屋の中で横たわっていた。
一体ここはどこなんだろう。何も分からず、ただぼんやりと小屋の天井を見つめていた。右手にはアキラの名残をしっかり握りしめていた。
しばらくたつと、一人の女性が入ってきた。
「大丈夫?」と声をかけられ、振り向いてみると、トモミがそこに立っていた。

ここはどこなんだろう、どうしてトモミがここにいるんだろう。僕は夢を見ているのか。
いや、僕はもしかしたら死んでしまったのかもしれない。これが死後の世界なのだろうか。
それにしてはあまりにも粗末な小屋ではないか。トモミがほほ笑んでいる。
「ここは?」という僕の間い掛けに、トモミは笑みを絶やすことなく答えた。

食糧を求め、街を去った人々がいた。トモミはその人々に従った。
人々は街からかなり離れた山中の、過疎化した村落で、荒れ果てた街とは無関係に静かに暮らしている人々と出会った。
農作業を生業とするその村の人々は、やせ衰え、今にも死んでしまいそうな移住者を手厚くもてなし、おしげもなく食糧を与えた。数十人いた移住者の群れも、その村にたどり着いたころには数人しか残っていなかったという。
そこで彼らは、村人の勧めもあり、小さな小屋を建てて、食糧の見返りに農作業を手伝うようになった。
もともと小さな村に、少数の移住者が増え、一部、気味悪がって排斥したがる者がいたものの、緒局、腰を落ち着けることができるようになったという。多くの村人は、賑やかになったと喜んでくれたそうだ。

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